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「たのしいにいのちがけ」人生そうでなくちゃいけませんよね!?Interviewee:アトリエe.f.t.吉田田タカシ

~編集者・徳永祐巳子のふむふむ人訪記~

編集者の徳永です。ふむふむ第4回は生駒へ行って参りました!

西を望めば生駒山、近鉄一分駅からほど近くに、子ども達が生き生きと作品づくりを楽しむ「アトリエe.f.t.生駒校」はあります。「つくるを通していきるを学ぶ」場所。今回お話を伺ったのは、アトリエe.f.t.代表の吉田田タカシさん、44歳。これからの時代に必要と感じるクリエイティブの大切さを、なんと23年も前から大切に教えて来られた方です。プロミュージシャンでもあり、水切りに薪割りを特技とする……って一体何者!? 興味を抱きつつインタビューをオファー。「喜んで!」のひとつ返事に、一瞬にして心を掴まれてしまいました。


徳永:大阪でアトリエを立ち上げられたのが1998年ですか?

吉田田:大阪芸術大学2回生のときにアトリエe.f.t.を立ち上げました。芸大・美大の予備校として、自宅を開放して少人数体制で教えていました。年齢でいくと19歳くらいの時から17歳の子を教えていましたね。教え子が受かると自分が受かった時よりうれしかったです。アルバイトはしたくなかったので、自分で何かをやった方がいいなーと思って始めました。

徳永:今でこそ学生が起業する社会になってきていますが、当時それをされていたってすごくないですか?衝撃的すぎます。

吉田田確かに。それ初めて言われましたけど、最近学生が会社を立ち上げたりしておられるのを見ていると、懐かしい感じを受けますね。

徳永:当時の芸大の学生さんって、かなり個性的な印象があります。

吉田田自宅をバーにしていた人もいましたねー。僕は、フリーペーパーの編集、シャッターに絵を描くこと、そしてデッサンスクールをしていました。音楽活動のDOBERMANもその当時にスタートしています。

徳永:当時からいろいろとされていたのですね。そのパワーはホントすごいです。

吉田田パワーというか、ただやめてないだけなんです。写真展もしていましたね。

徳永:やめてないだけですか〜(感心)。確かに、継続は力なりですね。

吉田田:僕は、兵庫県の多可町出身で、山あいの田舎で育ちました。当時ここから芸大に行く人はいなかったのですが、大阪とか神戸に憧れて芸大に行くことに。すごい人たちが集まってすごいことをしているんだろうと思ったら、意外とみんなコンパばかりしていて(笑)。面白くないなと思って、何か自分でやらないと、と思っていろいろやり始めたんです。フリーペーパー編集室兼アトリエ兼暗室兼住まい。だからまずはベッドをなくして土足で入れるようにしないといけないなと。そういうところからの始まりでしたね。

徳永:そうなんですね。

吉田田:写真の現像時に使う酢酸の匂いが充満している部屋に学生が入ってきて、「何この匂い」って言われてました(笑)。

徳永:芸大では何を専攻されていたのですか?

吉田田:スペースデザイン課でした。今、家とか店舗をつくることにも繋がっています。

徳永:子どもの頃からアートには興味があったのでしょうか?

吉田田:あんまりなかったですね。高校2年までサッカー部だったんですが、腰を痛めて部活を辞めることになり、音楽、写真、デッサンをやり始めて、文化、アート系に傾いていきました。

徳永:芸大に入って、やろうと思うことは実現してこられているので、すごいですよね。ご自宅を開放されて教室をされていましたが、生駒に来られたきっかけは?

吉田田:ずっと大阪に住んでいて、子どもが生まれる直前に酒をやめました。

徳永:お酒、結構お好きだったんですか?

吉田田:酒が大好きだったんですけど、このままだと幸せになれないなと思って。辞める時は朝まで泣きましたね。辞めたとなるとちょっと離れたところに住んでも終電で帰れたり、車で帰ることもできたり。山登りも始めました。結局山の子でしたね(笑)。山登りを始めると自然が足りないと感じるようになって、野菜をベランダで育ててしていましたが、もっと広いところで育てたいと思うようになって。地元の兵庫県でも探したのですが、なかなかいい物件が見つからなくて。8年くらい前に理想的な場所が生駒に見つかり住むこと決めました。大阪へのアクセスもよく、ちょうどいい場所でした。最初は生駒の人と関わる気はなく、ベッドタウンとして自分の家を持って、大阪の仕事場に行く予定でした。奈良に住んでいる意識も低かったですね。でもある時から生駒が好きになったんです。

徳永:生駒が好きになられたきっかけは何ですか?

吉田田:生駒の行政マンたちと仲良くなったのがきっかけです。生駒市役所の方とどんどん仲良くなっていきました。生駒市役所の方たちからは、町を楽しもうとしている姿勢が伝わってきて、気がつけば僕自身、生駒がめちゃくちゃ好きになっていた感じです。

徳永:そうなんですね。確かに、生駒市役所の方たちは自分の町を愛しておられる方が多いと思います。

吉田田:住み始めた頃には考えられないくらい、友達もいっぱいできて、今では生駒が好きと言えるようになりました。特に、女性が元気だなと思います。アトリエも最初は何だろうと思われていたと思いますが、すごく応援してもらえています。僕の知る村社会とは違って、よそ者を受け入れてもらえる体制があります。僕、本当の田舎で育っているので、ちょうどいい田舎だなと感じています。つかず離れず、よそ者もよそ者扱いせずに、ちょうど良い距離感です。

徳永:ところで、今天理医療大学の講師もされていますが、どんな授業をされているのでしょうか?

吉田田:今やっているのは非言語的コミュニケーションの授業です。言葉がないところで人と関わっていくことを教えています。学生たちは国家試験に通れば医療従事者になれます。最近少しずつ変わってきていますが、日本の教育は進学教育で、子ども達はひたすら暗記をして、それをテストすることを繰り返します。正解を頭に詰め込むことで医療従事者にだってなれます。でもそれだけではまずいなと思うんです。人との関わり方や物事の本質を見抜いて変えていく力など、数値化しにくいそういったスキルが豊かさと繋がっていると思うんです。最近では否認知力と言われていますが、そういう授業をしています。コロナのためオンライン授業で、どうコミュニケーションのことを伝えるかかなり悩みましたが、同じ時間に同じ夜空を眺め、何を思うかを考える授業をしました。同じ時間を過ごすことだけでも、クラスに一体感が生まれておもしろかったです。

徳永素敵な授業ですね。吉田田さんは大学の頃から与えられる授業だけでなく創造力を高めることが大事だということをずっとお持ちだったってことですよね?

吉田田:僕ね、ずっと腹が立っているんです。

徳永:え?何に?教育にですか?

吉田田:そう、教育に!小学校の頃から腹が立っています。黙って勉強していたら将来良かったと思うから、幸せになるからと言われて詰め込む勉強を続けてきましたけど、大人になってもやっぱりおかしいと思っていて、納得いかないんです。僕、あきらめない性格なもので。子ども達にこういう教育をしてはいけないと思っています。学ぶことはもっと楽しいはずだし、学びながらワクワクしたいと思っていたのに、させてくれなかったじゃない!って。

徳永:そうだったんですね。吉田田さんの原動力って何かなーとずっと思っていたんです。そこだったんですね。

吉田田:僕の原動力は、だいたい反骨ですよ(笑)。

徳永:反骨って強いですよね。それが、吉田田さんのキャッチコピー「たのしいにいのちがけ」に繋がっているのでしょうか?

吉田田:楽しいというのは快楽的なものではなく、豊かさとか幸せのことで、そういうことのために労を惜しまないってことです。楽しく生きるためにしんどくてもやっていかないといけないことがあります。アトリエe.f.t.の理念でもあるのですが、そういう教育環境をつくっていくことです。働く人は暮らしに着地する仕事をすることが大切で、仕事のために仕事をするのではなく、本質的な仕事は暮らしのためにあるものです。

徳永:それわかります。人生の起きている時間の半分以上仕事ですし、その時間が楽しくなくてどうするのって私もよく思います。生きていれば問題も起こりますけど、それも楽しめる仕事であってほしいですね。

徳永:アトリエに来られるお子さん、親御さんはどんな方が多いですか?

吉田田:僕たちがやってきた教育が、今ようやくど真ん中になりつつあります。20年以上やってきていますからね。ここに来てくれる子ども達も親御さんも、創造性を伸ばすところを探しておられます。県外からの方も多いですしね。熱心だと思います。

徳永:20年以上前からされていることが、本当にすごいことだなと思います。

吉田田:学力をあげる一歩手前の学びなので、生きる力を学べることだったり、自分はここにいていいんだと思える肯定感だったり、そういう部分を育てたいと思います。大人になって、それがどれだけ大事かということもさらにわかりました。アートとかデザインが軸なんですけど、人との関わりや信頼の中でやっているので、悩みの相談にのることも多く、24時間体制で夜回り先生のようなことをしている感じです。

徳永:ありがとうございます。(思わずお礼の言葉がこぼれました)

吉田田:基本はアートスクールですけど、生徒の中には高校生もいて、この人は話をしてもいい人かをしっかりとジャッジしていますし、そこに信頼してもらえるような大人でありたいなと思っています。「ダダさんになら相談できる」と。

徳永:ダダさって呼ばれているんですね!

吉田田:そう、ヨシダタカシってどこにでもある名前でしょ。至る所に同姓同名がいるので、嫌になって吉田田にしました(笑)。

徳永:だから田を足したってことなんですね。ダダさん!

吉田田:今、大学生でも、正直8割くらいの人は社会に出たくないと思っているはずです。就職活動では30社も40社も面接を受けて、就職したかと思うと離職率50%。みんなやめる会社に一生懸命になっているってなんかおかしくないですか?そういう社会を作ってきた大人の責任があります。だから、自分の範囲で何ができるかを考えたいのです。若者が飛び込みたい社会を作りたいなと思うわけです。徹底的にストレスをなくしたいし、おもしろいから自分の力を発揮できるような、そんな環境を作りたいです。

徳永:私も、楽しく仕事をしている大人の姿を見せることで、大人って楽しい、仕事って楽しいって思ってもらえる社会が理想と思っています。

吉田田:僕、経営者でもありますが、コロナ禍で大切にしたいことが見えました。会社なので、目標とする売上げのゴールは設定しますが、制限無く成長し続けることは、果たしてみんなにとって幸せなのか、成長し続けることが自分たちを苦しめているのであればそれは違うと思ったのです。スタッフと話し合うと意外にもみんな同じ意見でした。理想的なカタチにはまだまだですけど、みんなが働いていて楽しい関係でありたいです。10人くらいの規模だから、このチームでできることをやっていきたいと思います。会社の目標も3年更新くらいですね。人の暮らしって3年くらいで変化しますしね。

徳永:いいカタチですね。最後の質問になりますが、吉田田さんにとって、奈良の好きな場所はありますか?

吉田田:山登りが好きだから、一生登れる山がたくさんあるのはうれしいですね。あと、今、石ノ森章太郎の「マンガ日本の歴史」を読んでいるんですけど、関西圏の話が中心なので面白いです。奈良は歴史が深いです。仏教が栄えてきて、信仰が根付いているのが面白いところです。村の神社を例えるなら、大事だと思うものはみんなで守っていますよね。大事な場所って思っているから。奈良もそんな場所だし、アトリエe.f.t.もそういう場所になればと思います。将来寄付で成り立つような場所になるとうれしいんですけど。

徳永:それいいと思います!

吉田田:やれることをやっているだけで、今は何屋さんっていう時代じゃないなーとも思っています。学生時代からそれは思っていて、極めるのは大変だから、何でもやればいいなと思って。百姓みたいな感じです。やれそうなことをいろいろしたら食べていけると思っています。でも、今、何かに不安を持って、生きていくのが大変と思っている若者って多くないですか?でも何かをやっていれば食べていけますし、やりたいことをやるべきですよね。20歳の子なら、80歳まであと60年。おもいっきりやりたいことをしないと、時間足りませんよね。

徳永:人生楽しまないともったいないですね! 

吉田田:僕にもできないことはいっぱいあります。数字も苦手です。でも、論理的な思考力はデザインから学ぶことができましたから、人それぞれにあった学び方を選択できるような社会が理想的だと思います。いつの時代も動きが遅いと感じることってそのぶん責任が大きなジャンルですよね。失敗が許されないから遅いのだと思います。だからこそ僕たちみたいな小回りのきくものが動いて、選択肢のひとつになればいいと思っています。


【編集後記】

「天才」と印字されたスリッパ。目を奪われるオブジェに絵画。自由な表現があふれるアトリエで、子ども達はのびのびと、作品づくりに夢中でした。

私、吉田田さんと同世代ですが、学生時代を振り返り、あの時代にアトリエを始めておられたのか〜と思うと、尊敬の念しかありません。そして、常に自分の心に正直に、人の幸せはどこにあるのか、問い続けておられる姿がありました。

大人こそいろんな制限の中で閉じ込めている気持ちは多くなっているはず。

こうあるべきだ〜とか、こういうもんだ〜とか、言い訳多くなってきてるかも。

自分はどうだろう!?
自分に正直に生きているだろうか!?
何か苦しいと感じていることはないだろうか!?
自分だけでなく、子ども達の不安に応えてあげられているだろうか!?
今、いろんな自問自答が始まっております。

アートの世界、クリエイティブな世界は、自分の心と向き合える、自分を自由に表現できる世界。

自分を見失いそうになったり、大切なことって何だろうと悩んだ時に、吉田田さんを思い出すことにします。そして、またゆっくりとお話聞かせてください。

吉田田さん、ありがとうございました。

(記事・徳永祐巳子)



吉田田タカシ
兵庫県多可町出身。生駒市在住。アートスクール アトリエe.f.t.代表。SKAバンドDOBERMANボーカル。株式会社たのしいにいのちがけ代表。大学講師、店舗デザイン、アートディレクター。特技は、水切り、薪割り、山登り、狩猟などなど。
アートスクール アトリエe.f.t. https://eftosaka.com

最終更新日:2021/05/14

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