奈良、旅もくらしも

【連載】雑談🐑書を読みて羊を亡う「一頭目 企画会議をして羊を亡う」とほん 砂川昌広、みほ子

構成/とほん タイトル絵/上村恭子

奈良にまつわる本の紹介をするんでしたっけ。

あ、すみません。ほかに本の紹介をしてくれるページがあるので変更してもらえますか。

いきなり! えーと、本のある場所を紹介するみたいな案もあったけど、そういうの?

もしかして、紹介されるのはどうだろう。

ありですね。本好きの方や本にまつわる何かをしている奈良の友人知人に、お気に入りの本や、それにまつわるエピソードや場所を紹介してもらうのはどうでしょう。

しましょう。 誰んとこ行こか!

そうやなあ~。

(しばし「好きな本の話をしろと強要しに行く人リスト」作成に熱中)

わーい、2年分くらいできそう!

わーい、受けてもらえれば!

聞きに行くのは次回からとして、今日はひとまず、われわれの自己紹介でお茶を濁そうかと思います。

言い方…。改めまして、大和郡山市柳町商店街で「とほん」という本屋を営んでおります書店員の砂川です。よろしくお願いいたします。こちらは妻です。

妻です。よろしくお願いいたします。

奈良県大和郡山市は、 東京・江戸川、愛知・弥富とともに「 金魚 の 三大産地」と呼ばれています。とほんから歩いて数分のあたりにも金魚池が広がっていたり、町のいたるところに金魚をモチーフとしたデザインが潜んでいたりします。

当店では「読書になじみのない人が手に取りやすく読んでみようと思える本でありつつ、読書好きの方も深く読み込める本」を狙って選書しています。お客様が棚の中から「いいな」と思えるものを見つけて買ってもらえたら嬉しいです。

いつも「書店員」と名乗りますよね。店主さんと言われることのほうが多いでしょ?

自分で店を始める前から本屋で働いていたし。ジョブが書店員、ポジションが店主かな……。

ゲーム脳。

子どもの頃から、読むところの多いアドベンチャーゲームが好きでした! 『ポートピア連続殺人事件』とか! 『弟切草』とか! 『街』とか!

お客様が棚の中から「いいな」と思えるものを見つけて買ってもらえたら嬉しいとのことですが、逆に「これは困る」というのはありますか?

例えばほかの何かを引き合いに出して比較される時なんか、そこそこ困るかも。それぞれに良さがある。優先順位をつけること自体はよくあるけど、本屋はいろんな本を並べて、それぞれの世界があることを提示している場所だと思うので、優劣を持ち込むのはなんかおかしくないかなと思うので。

おっと、いい話をありがとうございます。「奈良、旅もくらしも」編集長の生駒あさみが「旅もくらしも」という名称を考えた理由も、そういうとこで。何かを上げるために別の何かを下げることはしないということで、旅「も」であり、くらし「も」という。「しないこと」を決めるの大事ですね。とほんにもありますか、「しないこと」。

ポップを立てること。イベントでの例外はありましたが、それは選書フェアという企画だったので。うちは、SNSで本の紹介を読んだ上で来店してくださる方が多い。店頭では本そのものをじっくり手に取って見てもらえる雰囲気がいいかなと思って付けてないです。

とほんのInstagramの画面を開いて、お目当ての本を示してくれる方、増えました。

かなり古い投稿の本を探しに来てくれる方もおいでなので、SNSでの本の紹介は、少し遠い先の時間に向けてしていることでもあるんだなあと。朝、店を開けてから1時間くらい誰も来ないと、『とほんももう終わりだ』といつも落ち込むけど、そう思っている場合ではない。

『とほんももう終わりだ』って2,3日前に言うてたね。

よく思うからね。それと、これまではやってましたがイベントへの参加は控えます。なるべく店にいるようにしたいというのが元々あったし、ありがたいことに通販が増え、やることが山積みで。自店のあれこれにしっかり手をかけたいので。

奈良を地盤に本でイベント参加するすてきな方、たくさんいらっしゃるし、良いのではないでしょうか。それでは、「しないこと」があれば「すること」は?

う~ん、本を売ること。

もう一声。

え~っと、金魚を飼うこと。いま店内にいる、タロジロウとジロタロウにはいつまでも元気でいてほしい。

とほんの店内に置かれた水槽で泳ぐタロジロウとジロタロウ。とほんでの開店前の仕事は、品出しでもなく返品でもなく、金魚へのエサやりから始まります。

長くなってきたので、このへんで終わります。

わかりました。

うっかりしていましたが、このコーナーのタイトルについて説明した方がいいですね。

『読書亡羊(どくしょぼうよう)』という四字熟語を訓読したのが「 書を読みて羊を亡う(しょをよみてひつじをうしなう)」です。羊番が本を読むのに夢中で羊に逃げられてしまった、という話です。

そんなはめになるくらい、のめり込んで読んだ本にまつわるエピソードを、ゲストに語っていただこうという連載ですね。

そういうことにしましょう。

とほんのある「やなぎまち商店街」は、「金魚ストリート」と銘打って、商店街の組合店がそれぞれの店頭でさまざまな種類の金魚を飼育中です。2021年2月27日からは「御金魚帳」という御朱印帳を模したスタンプラリーが始まります。町歩きの楽しみの一つにいかがでしょう?

執筆者紹介

連載「雑談🐑書を読みて羊を亡う」
構成/とほん

編集部から(というか、編集部員本人)

奈良県大和郡山市にある本屋「とほん」の店主・砂川昌広が、奈良のあちらこちらへ本好きの人を訪ね、読書にまつわるエピソードや思い出の場所などについて、お話してもらおうという連載になる予定。「奈良、旅もくらしも」編集者の砂川みほ子も、あわよくば同行します。

最終更新日:2021/02/12

TOPへ