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宮司さんの想いをイラストレーターが描いて作った葛木御歳神社のオリジナル御朱印帳

奈良好きの方から「御朱印帳を携帯するようにしている」というお話をしばしばお聞きします。なかには、御朱印帳を見せてくださる方も少なくありません。それらは日頃使うノートやレポート用紙などと比べると、手の込んだもの、何かしらの意味がこめられたものであることが多々です。

各社寺オリジナルの御朱印帳もたくさんありますね。奈良県御所市にある葛木御歳神社では、以前からあったオリジナルの御朱印帳に加え、先ごろ新しいデザインのものが登場しました。

葛木御歳神社
祭神は本社の背後の御歳山に鎮まる五穀豊穣を守護された神。創祀は神代。全国の御歳神、大年神の総本社。御神名の「トシ」は穀物──特に稲またはその実り──を意味する古語で、御歳神は稲の神、五穀豊穣をもたらす神、また、穀物の生長を司る神として古くから崇敬されている。また「トシ」は年に一度の収穫を基準とした時の単位であることから、何か事を始める時にお参りするとよいとされる。正月の鏡餅は御歳神へのお供え物(依り代)であり、このおさがりのお餅には御歳神の魂がこめられており、これを「おとしだま」と呼んでいたものが今のお年玉の起源。
(葛木御歳神社公式webサイトから要約抜粋)

そしてこちらがその御朱印帳です。

表紙は2パターン。写真左が最初に出て来た第1案。右手が神社の要望を受けての第2案。結果的にどちらも良い!とのことで、色違いで制作することに

同社宮司の東川優子さんの希望をかたちにした御朱印帳の表紙です。「姫神様」の横顔が墨の質感で表現され、さらに「稲の生長に必要な太陽と、雨の恵みが描かれ、稲穂が稔ることを表している。豊穣をもたらすデザイン」。そういえば御所のあたりは葛城山の伏流水が豊富で、お米やお酒のおいしい土地柄ですね。

「御歳神社の姫神様の御朱印帳を」と考えた東川さんが、姫神様を表紙に描くにあたって適任者を探していたところ、複数の人から名前が挙がったのが、奈良県下北山村在住のイラストレーター・上村恭子さんでした。

と、知らない人のように書いていますが、上村は、当サイトを運営するココトソコノ制作室の代表を務めており、当サイトではバナーイラストを制作するなどしています。当サイトの編集長である生駒あさみの著書『天皇になった皇女たち』(淡交社)の挿絵をはじめとして、古代に生きた女性を、ここ数年描いてきました。それをご存知だった方が、東川さんにご推薦くださったというのが事の次第です。

「上村さんの奈良時代の女性天皇の絵を見て、『あ!これ!このイメージ!』とすぐに思いました。凛とした気高さと少し憂いを持った優しさの両方を表現出来る方だなぁと。そして、稲の女神として描いて欲しいので、稲とそれに必要な太陽と雨を入れて欲しいとお願いしました」と東川さん。

見開き1枚ものの御朱印もあります(御歳神社公式サイトより転載)。「知人から『ぜひ!』とリクエストがあり作ることに」と宮司の東川さん

改めて上村に制作の意図を尋ねてみたところ、「宮司様にすでに『こういうことを絵に』という深い想いがおありだったので、それにお応えしたいなと。華やかな配色がお好きでらっしゃるとのことで、そのあたりも反映させました。御朱印帳そのものの話とはちょっと違いますが、ご挨拶をしようと初めて神社にお参りに伺ったとき、ちょっと高い場所に鎮座しているんですけど、振り返ると、御所の町が木立の向こうに見えて、それがすごく良かった。そういう気持ちも込めて描きました」

一時はかなり荒廃していたという葛木御歳神社ですが、現在は大変美しく手入れされ、地域のコミュニケーションスペースにもなっています。今回の御朱印帳も、氏子の皆さんや遠方の参拝者、支援者の皆さんと丁寧に縁を結んだ先にあり、また葛木御歳神社を大切に伝えてきた東川さんの想いが詰まっています。

今回ご紹介した御朱印帳は布にプリントした表紙に、中は和紙の蛇腹折り式、サイズは12.3㎝×18.5㎝の大判型で、通信販売も受け付けてくださるそうです。もちろん現地へお参りしたいものですが、こんな時期だけに、お取り寄せさせていただけるのはありがたいですね。詳しくは葛木御歳神社公式サイトでご確認ください。

(記事・砂川みほ子)


葛木御歳神社 http://www.mitoshijinja.jp/

最終更新日:2021/03/03

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