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今月のおやつとうつわVol.5 バーマンズチョコレート「生チョコレート3種3粒詰め合わせ」、楽玩堂「染付皿」

バーマンズチョコレート「生チョコレート3種3粒詰め合わせ」
楽玩堂「染付皿」

家で過ごす時間がぐっと増えたこのご時世。いつも同じ場所リモートワークやリモート授業……飽き飽きしてしまった人も多いはず。この連載では、奈良で手に入るおやつと器をご紹介します。素敵な器においしいおやつをのせて、おうち時間をちょっぴり楽しくしてみませんか。


暑い夏が終わり、少しずつ涼しくなっていくこの時期は一抹の寂しさを感じる。たまには騒がしい現実から離れて、秋特有の寂寞に浸ってみてもいいかもしれない。牡鹿の鳴き声が聞こえる夕暮れに、じっくりと味わいたい大人のスイーツをご紹介。

今回の主役は、バーテンダーの経歴を持つショコラティエが作る「バーマンズチョコレート」の洋酒入り生チョコレート。それぞれ異なるお酒を使った生チョコレートが3つ入った「3種3粒詰め合わせ」。A、B、Cと3種類ある詰め合わせのうち、AとBをセレクトした。Aの箱の中にはグラッパ、シングルモルト、オレンジ、Bの箱にはラム、カルヴァドス、シャンパンの順に立方体のチョコレートが並んでいる。箱を開けると、思わずくらっとするほどお酒の良い香りが漂う。私のお気に入りは、ラムとシングルモルト。まろやかで深みのあるラムは、ビターだがそのふくよかな香りとのバランスが絶妙で親しみやすい味わい。セミビターのシングルモルトはラムよりも少し苦みが柔らかだが、ずっしりと重く濃厚。スモーキーでやや癖のある香りも私の好きなポイント。お酒の香りが強すぎても、カカオの苦みが強すぎてもいけない。それぞれの洋酒に対するカカオの量を微妙に調整し、味と香り、双方が引き立てあう完璧な比率を生み出すのは、まさに職人技だ。

そんな絶品チョコレートをさらに楽しむ方法がある。チョコレートをきれいに飲み込んでしまうのではなく、少し舌の上に残しておく。そこへシャンパン(スパークリングワインでも可)を流し込むように口に含み、ゆっくり味わう。口の中でチョコレートがしゅわっと気化するような不思議な感覚になるが、これがとび上がるほどおいしい。お酒に自信のない方は、牛乳もおすすめ。ぜひお試しあれ。

生チョコレート3種3粒詰め合わせ(648円)

このチョコレートのために選んだのは、東向き商店街にある骨董店「楽玩堂」の染付皿。江戸時代後期に作られたという伊万里焼、現代でいう有田焼だ。明治時代以降の染付と大きく異なるのは、その色と図柄。文明開化以前の藍色は、不純物が含まれるため、ややくすんだ色合いになる。この落ち着いた青色がチョコレートのダークブラウンによく合う。また、美しく収まった縁の模様に対して何となく気の抜けたような中央の絵柄も特徴的。江戸時代の図柄のほとんどは中国から輸入された焼物を、職人が描きうつしたものだという。絵の意味などはいちいち考えない。毎日毎日、場合によっては一生同じ図柄を描き続けた。その結果、規則的な縁の模様はより洗練されていったのに対し、風景画と思しき中央の絵は少しずつ歪んでしまったのだ。

染付皿 直径16.5㎝(2,000円)
裏面の模様もかわいい

同じ絵をただひたすら描き続けた職人たち。何を思いながら筆を動かしていたのかとつい考えてしまう。何の変化もなく延々と続く己の仕事に辟易していただろうか、これを描き続けなければ食べていけないと必死だっただろうか。どちらにしても、200年後に洒落たチョコレートを載せる器になるとは考えもしなかったはず。当時の職人たちをびっくりさせるつもりで意外なものを載せてみる、というのもこの器の楽しみ方の一つなのかも。

(記事・岡田菜友子)

バーマンズチョコレート 奈良餅飯殿工房
住所:奈良県奈良市餅飯殿町42-1 OKビル2階
電話:0742-20-5677
営業時間:10:00~18:00
定休日:不定休
席数:8席(カフェ併設)
駐車場:無 
https://www.bar-choco.com/page/5


楽玩堂(らくがんどう)
住所:奈良県奈良市東向中町16
電話:0742-22-3408
営業時間:10:00~19:30
定休日:無休
駐車場:無
http://higashimuki.jp/shoppage_jp.php?id=39&g=0

最終更新日:2021/09/17

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