奈良、旅もくらしも

「みんなでつくる!王寺をめぐるーと」イベントレポートvol.2

文化財再発見ワークショップ「みんなでつくる!王寺をめぐるーと」
イベントレポートvol.2「めぐるーとのスポットを考えよう!」

奈良県北西部の町、王寺町。近年はベットタウンとして発展し、「街の住みここち『自治体』ランキング2020(大東建託株式会社)」で栄えある全国1位に輝くなど、注目が集まっています。歴史深く、魅力的な文化財も多い王寺町の魅力を知ってもらうべく、「探して、歩いて、自慢する!」をコンセプトに全5回のワークショップが開催されることに。「奈良、旅もくらしも」では、ワークショップの模様をじっくりご紹介します!


■「めぐるーと」をどうやって決める?前回のアンケート結果の共有と今後の方針

10月17日に開催された2回目は、「めぐるーとのテーマを決めよう」という当初の予定を少し変更し、「めぐるーとの”スポット”を決めよう」と題したワークショップでした。なぜ、”テーマ”が”スポット”になったのか?その理由は、前回のアンケート結果によるものでした。2回目のワークショップは、アンケートの集計結果の共有からスタートです。

前回に引き続き、解説は王寺町地域交流課の名物学芸員・岡島永昌(えいしょう)さん。岡島さんは、「王寺町に魅力を感じましたか?」という設問の自由回答欄に注目。「交通の要衝である”利便性”、古くからの社寺が残るなどの”歴史”、明神山をはじめとする”自然”、広報キャラクターとして活躍する雪丸の”娯楽性”など、さまざまな魅力を挙げていただきました。このバランスこそが王寺町の魅力。めぐるーとでも大切にしたいですね」と語ります。

「現時点で思い描くめぐるーとは?」という設問には、古代や中世などの時代ごとのコース、所要時間ごとのコース、休憩が多くバスが乗り継ぎやすいユニバーサルなコースなど、さまざまな提案が寄せられたことを紹介。「王寺町の文化財で特に興味深かったもの、実際に行きたいものを3つ選んでください」という設問には「3つでは足りない」「選びきれない」との意見も。当初はワークショップ内でコースを設定し、パンフレットもそれに沿った内容になる予定でしたが、「興味関心に沿って自分でコースをつくれるようにする方法もあるのでは?」と運営スタッフ間でも議論となる大切な気づきとなりました。

「そこで、今回はできるだけ多くのスポットを掲載することを重視することにしました。これから皆さんと一緒に紹介スポットを決めていきたいと思います」と岡島さん。さらに、前回は説明しきれなかった隠れた魅力や、「交通の便について知りたい」という意見をふまえた解説も行うとのこと。はたして、どんなワークショップになるのでしょうか?

ワークショップ待機中の画面

■気になる結果は!?みんなの意見をリアルタイム投票システムで集計

今回は、王寺町を独自に「北王寺」「南王寺」「畠田」「藤井・亀の瀬」の4エリアに分け、それぞれのエリアの特徴や文化財について解説が行われました。

各エリア解説の冒頭は、参加者に魅力的なスポットの写真をみてもらい、行きたいと思うところを各エリア3つ×2回投票。リアルタイムで投票の様子がわかるシステムを導入し、まずは写真を見た第一印象で「どこに行きたいか」を参加者が選びます。前回の講座には含まれていなかったスポットもあるので、直感でどこを選ぶのか、悩むところです。

投票で上位にランクインしたスポットは以下のとおり。この後岡島さんからの詳しい解説があるので、あくまで暫定結果です。

●北王寺(大和川~葛下川北側)
松浦家住宅/カルケット(第1井路開渠)/久度神社/舟戸神社(西安寺跡)/大和鉄道築堤地下道/船渡陸橋
●南王寺(葛下川南側)
達磨寺/谷家住宅/放光寺/孝霊天皇陵/親殿神社/カボチャクイ地蔵
●畠田
火幡神社/火幡神社絵馬殿/尼寺廃寺跡(香芝市)/明神山/畠田古墳/永福寺
●藤井・亀の瀬
旧大阪鉄道亀瀬隧道/亀の瀬問屋場跡/藤井の町並み
※エリアが狭いため、紹介スポット候補も他エリアより少なくなっています。

前回の講座で岡島さんからの解説があったスポットが人気の中心でしたが、エリアによっては票が分かれることも。「リアルタイムに結果がわかるのは楽しいですね♪」と参加者からチャットでコメントが寄せられました。

こちらは亀の瀬

■どのエリアにも魅力がいっぱい!隠れた文化財スポットを解説

各エリアの説明では、前回アンケートで寄せられた「バスやレンタサイクルなどの交通の便についても教えてほしい」という声をふまえ、各エリアの鉄道最寄り駅やバスの本数、徒歩や公共交通での所要時間について、詳しく解説がありました。ちなみに、町内にレンタサイクルはなく、アップダウンが多いため自転車で巡るのはおすすめできないとのこと。レンタカーは細かく周遊するには不向きですが、使い方次第では便利なようです。法隆寺や信貴山へのアクセスもよく、王寺町とセットで巡るのも楽しそう!「町のサイズ感がよくわかります」と参加者からも好評でした。

前回の講座に引き続き、文化財についてもたっぷり紹介。北王寺エリアは、国の登録有形文化財となっている松浦家住宅について詳しく解説されました。明治43年ごろに建てられた松浦家住宅。この家を建てた松浦音吉は松浦音五郎と名乗り、「松浦組」を経営して全国各地のトンネル工事に携わっていました。母屋など主要な部分は見学不可ですが、米蔵はバーとして営業しているそう。「鉄道の町」は、多くの鉄道に関わった人物の故郷でもあったのです。「こんな人が王寺にいたなんて!」と地元出身の参加者からも驚きの声が。

聖徳太子ゆかりの達磨寺がある南王寺エリアの解説では、前回紹介しきれなかった文化財に加え、地域独自の風習についても紹介。井戸と呼ぶ集落内にある共同井戸には、地蔵盆の時期に井戸の中に安置されたお地蔵様の向きを変える行事「井戸がえ」が残っています。大正時代に赤痢が流行し、「どの方角もまんべんなく守ってもらえるように」と願いがこめられたのだと言います。薬師堂の跡地に祀られているカボチャクイ地蔵は、その昔地蔵盆の際に村中から集めた20貫(75㎏)ものかぼちゃを炊いてふるまった風習からその名がついたそうです。このほか、住宅開発の斜面を利用したオリーブ畑や葛下川の修堤碑などが紹介されました。

香芝市に隣接する畠田でも、地域に伝わる独自の風習について解説が。火幡(ほばた)神社の絵馬殿の中には、20年前の調査時点で540枚の絵馬が奉納されていたそうです。特徴的なのは、絵馬のほとんどが個人奉納によるものであること。子どもが生まれた年の秋祭りの際に、絵馬を奉納する風習があるのだとか。「二上山から葛城山麓に限られた風習なんです。氏子入りの意味合いをもつと考えられます」と岡島さん。建物だけではなく、地域の風習が今も残っているのも王寺の魅力ですね。

ワークショップの最後を飾る藤井・亀の瀬エリアは、旧大阪鉄道亀瀬隧道や第3・4大和川橋梁など、鉄道や土木関連の見どころについて解説。昭和7年の地すべりで崩壊した亀の瀬トンネルにかわってう回路としてつくられたのが、第3・4大和川橋梁。川をななめに渡るため、トランケートトラス構造と呼ばれる珍しいものが使われているそうです。このほか、昭和57年に起きた水害と、水害をふせぐポンプ場についても解説が。現代の王寺町は、さまざまな技術によって支えられているのがよくわかります。

今回も盛りだくさんな内容で、王寺町の魅力や奥深さがさらに明らかになった回でした。ワークショップ終了後のアンケート結果も気になるところ。次回はいよいよ、めぐる―との紹介スポットが決定します!

今回の岡島さんの背景には王寺町の様々な取り組みが…

2021/11/13(土)、第3回目のオンラインワークショップです。
前回に参加できなかった方も、録画データで予習していただけます。リアルタイムで参加できない方も、録画を見ていただいて、あとからアンケートでご意見いただくという参加方法がありますので、ぜひぜひご参加ください。

最終更新日:2021/11/06

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