奈良、旅もくらしも

【連載】奈良レベル1「3章 奈良をもっと知りたい!」ヨシノマホ

文・絵/ヨシノマホ

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「奈良県についてもっと知りたい!」という気持ちを持ちはじめたものの、奈良市や吉野山の他にどんな名所があるのか?
まだまだ無知だった私は、まず本から知識を得ることにしました。(趣味でもなんでも、何か始める時にはまず本を買う!というのが私流なのです。)

それにしても、一体どんな本を買えば良いものか?全く見当もつかないまま、とりあえずガイド本コーナーの本棚に並んでいるものの中から、 “私が好きなオレンジ色が表紙に採用されている” という理由だけで一冊の本を手に取りました。

よくある奈良の観光情報が掲載されているガイド本でしたが、当時の私にとっては「未だ知らない魅力的な奈良情報」がこれでもかと詰め込まれている宝物のような一冊でした。
神社仏閣、歴史・伝説、自然、芸術、グルメ、土産物・名物などなど…。
ページをめくり、読み進めるたび「早くここを訪れてみたい!実際に触れたり、体験してみたい!」とワクワクする気持ちがどんどんと膨らみます。

この本のおかげで、奈良市や吉野山の他にも魅力的な地域がたくさんあることも分かってきました。(この時、吉野郡が奈良県の半分以上を占めていることや、奈良盆地が奈良県のどの辺りにあるのかをちゃんと知りました…。恥ずかしい。)

中でも実家からもそう遠くない明日香村のことが妙に気になったので、早速、手に入れたガイド本を片手に明日香村巡りをすることにしました。

小学生の頃に両親とサイクリングに来て以来の明日香村。当時のことを思い出してみると、うっすらとですが楽しかったという記憶が蘇ってきました。
「そういえば、鬼のトイレと呼ばれるものを見に行ったような気がするなぁ…。」
鬼のトイレがどこにあるのか?そもそもそんなものが存在するのか?記憶が曖昧で確証はありませんでしたが、とりあえずガイド本を頼りに、駅の近くから順々に史跡や名所を巡っていくことにしました。

駅から歩くこと数分。
鬼のトイレ…。いわゆる「鬼の雪隠(せっちん)」とよばれる史跡は案外すぐに見つかりました。
トイレの近くには「鬼の俎(まないた)」もあって、説明板によると、ここで鬼が人間を調理して食べていたと書かれています。(実際には、トイレやまな板などではなく、古墳の石室の一部だとされています。)

予想外の展開に興奮しつつ…、私はさらに散策を続けました。

豊かで美しい自然の風景。
不思議な謎の石造物。
いにしえの人々が眠る古墳。
古代からの息吹を伝える万葉歌碑。

実際に目にすることができるものの他にも、明日香村には歴史・伝説などの「物語」がそこかしこに点在しており、私の心はそれらを見つけるたびにトキメキました。

そして夕方近くになり、明日香村散策も終盤にさしかかった頃。
私は甘樫丘へと登り、明日香村を一望しながら想像(妄想)をさらに加速させていました。1400年前にいた人々の痕跡を確かに感じながら、私の心は飛鳥時代にタイムスリップしていたのです。

「私が今見ているのと同じような景色を飛鳥時代の人々も見ていたのだろうか?」「当時の人々は一体何を感じ、どんな生活をしていたのだろうか?」

古代についてはまだまだ分からないことも多いそうだけど、その分きっと、想像を巡らす余白も多いはず!
「歴史ロマンという言葉があるけど、こういうことなのかなぁ…。」と、しみじみ感じながら、私はまた眼下に広がる景色に視線を落としました。

「知りたい!」という視点で見る明日香村の風景は、そのどれもが新鮮な発見と感動を私に与えてくれました。

奈良の魅力はそこかしこに散らばっている。その魅力はどこへ行くでもなく、遥か昔からその場にとどまっている。
ただそれに気づくか気づかないかの違いだけなんだ…。


奈良をもっと知りたい!と思う前の明日香村は、私にとって “どこかへ出かける時に通過する自然が綺麗な場所” くらいの認識しかありませんでした。どんなに素晴らしい宝物があったとしても、その価値に気づいていなければ、目にも心にもそれが認識されることはありません。
まず始めに「知りたい!」と思う気持ちを持つことが、本当に重要で大切なことだと、私はこの経験から学びました。


執筆者紹介

ヨシノマホ
奈良生まれ奈良育ち。「楽しく!面白く!」をモットーに、大好きな奈良を題材としたイラストや漫画、奈良グッズなどの制作を行っている。
Twitter:https://twitter.com/yoshinomaho
Instagram:https://www.instagram.com/yoshinomaho/

最終更新日:2021/11/22

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