学生でにぎわう近鉄学園前駅から徒歩3分ほどの場所に、ひっそりとたたずむカフェがある。2021年5月にオープンした「宿雨」は、会員制かき氷店の「LABO103」の系列店。もちろんかき氷も楽しめるが、ここのメインはエスプレッソを使用したドリンクとグラスに入った美しいチーズケーキ。実はチーズケーキ好きな「LABO103」のオーナー、垣内祐紀子さんの奈良でおいしいコーヒーを楽しめる場所を増やしたいという思いから生まれた。

垣内さんがこの物件に出会った日は雨が降っていた。しとしと降り続く雨を見て、すっと心が落ち着いたという。「雨」というとネガティブな印象を抱きやすいが、見方を変えれば、そのイメージは一転する。「長く降り続く雨」を意味する名の通り、店内にはさりげなく雨を思わせる意匠が凝らされており、私も取材中にはっと気が付いた部分がある。じっくり観察してみよう。

さて、内装を楽しんだところでちょうどエスプレッソが出てくるはず。日本に数台しかないレバー式の機械で1分～1分20秒ほど時間をかけて淹れる。ふんわり香ばしい香りが漂う中、その様子を眺めているだけでも楽しい。コーヒー豆は、店主の牧恵輔さんが季節や期間限定のチーズケーキに合わせてセレクト。湯気の立つカップの横に宝石みたいなケーキが並ぶ。今回はレギュラーメニューの「檸檬とグレープフルーツのレアチーズケーキ」をいただいた。レアチーズに果物、ジャムなどが層になっていて、すくう場所によっていろいろな味が楽しめる。

雨が降ると気分が重くなるけれど、裏を返せば、心が落ち着いている時なのかもしれない。そんな雨に包まれているような場所で一息つけば、普段見落としてしまっていることや、忘れがちなことにも目を向けられそう。

（記事・岡田菜友子、撮影・徳永祐巳子）

最終更新日：2022/02/12

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