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今月のおやつとうつわ vol.20 soraniwa「大和茶パウンドケーキ」/陶芸家・タナカシゲオ「白磁瓷小盤皿」

仕事に学校、家事…毎日やることいっぱいで忙しいですよね。あわただしい日々を過ごしていると、ついつい自分のことをおろそかにしがち。たまには、おいしいお菓子で自分を甘やかしてみませんか。この連載では、奈良で手に入る素敵なおやつと器をご紹介します。お気に入りのおやつセットを用意して、ちょっと一息つきましょう。


特にお祝い事があるわけでもないのに、無性にケーキが食べたくなる日がある。なんでもない日にケーキを買ってコーヒーを入れ、たっぷりの牛乳を注ぐ。たったこれだけでも、なんだか贅沢な気分になれる。ケーキの力なのか、自分が安上がりな人間なのか、とにかく「あ、今日はケーキが食べたい」と思ったら我慢するべからずというのが私の持論だ。

今回のお菓子は「大和茶パウンドケーキ」。見た目もかわいらしいケーキで、おやつの時間がもっと楽しくなりそう。もともと美容関係のお仕事に就いていた店主の前川亘子さん。製菓は独学だが、幼いころからお菓子作りが得意なお母さまの技を間近で見ていたそう。パウンドケーキは、母から子へ受け継がれたレシピの一つ。ホワイトチョコの柔らかい甘みと抹茶の風味が絶妙で一度食べると忘れられない味だ。美しい緑色の秘密は、光を当てないこと。添加物は使用せず、販売直前までケーキはカットせずに遮光し、お客様には切りたてのものを販売することで色を保っているそう。色、香り、さわやかな風味。五感をめいっぱい使って楽しむこのケーキは、お茶の時間にも、ちょっとしたご褒美にもぴったり。

大和茶パウンドケーキ(380円)
大和茶のみずみずしい香りが口いっぱいに広がる

色合いの美しいケーキに合わせて選んだのは、白磁のお皿。陶芸家・タナカシゲオさんの作品だ。以前は京都に在住していたが、薪窯で器を焼ける場所を求めて、2007年に日本の始まりの地、明日香村の集落に移住。現在使用している窯も工房も全て手作り。朝鮮陶磁器の一種である李朝白磁をはじめとした古い陶器をお手本にして作陶するタナカさんにとって、環境を整えることも作品作りの一環だ。可能な限り手作りに囲まれた空間は、精神を古の人に近づけてくれるのだそう。

白磁瓷小盤皿 約17㎝角(7,000円)
うっすら青みがかっている。じっくり眺めて何を載せるか考えよう。

近代的なものから隔離された環境で、余計なことは考えず、指先の感覚だけに集中して造られた白磁。まさに「清廉潔白」という言葉がぴったりだ。「見栄を張らず、押しつけがましくならないように」を忘れずに器と向き合っているというタナカさん。そんな謙虚な心構えが、ストイックかつ温かみのある作品を仕上げているのかもしれない。

ケーキを食べると幸せな気持ちになるのは、もちろんケーキそのものがおいしいからなのだが、それだけではなさそう。どんなお皿にどんな風に盛り付けて、飲み物は何にしようか……この考えている時間もわくわくする。カフェで食べるのとはまた違った醍醐味だ。そして、それぞれが作られている背景を知り、それを思い浮かべながら食べるともっと楽しい。ちょっと賢くなったような気さえする。

盛り付けや組み合わせのセンスに自信がなくても大丈夫。まずは自由にお茶の時間を楽しんでみよう。

(記事・撮影/岡田菜友子)


soraniwa (ソラニワ)
住所(移転後):奈良県生駒郡斑鳩町法隆寺東1-2-30
定休日: 不定休(インスタグラムをご覧ください)
soraniwa(@_soraniwa_) • Instagram写真と動画

陶芸家・タナカシゲオ
タナカ シゲオ(@rikeiyoh_tanaka_shigeo) • Instagram写真と動画

最終更新日:2022/12/30

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