奈良県観光局では地域の課題解決と持続可能な発展をめざし、「奈良の観光地域づくり」について取り組んでいます。奈良県庁の思いや、地域のキーパーソンのインタビューを掲載していきます。
※本記事は月刊奈良2024年12月号で掲載した記事と同じ内容です。
石舞台古墳の近く、明日香夢の旬菜館内にあるレストラン、ポカ・フレールを経営しています。当レストランは、明日香村の新鮮な地元野菜をふんだんに使った料理を提供していますが、僕自身としては、レストランの経営だけでなく、地域全体の持続可能な観光の在り方にも目を向けています。
たとえば、今は村内の一部地区の棚田の再生と保全活動にも取り組んでいます。景観がとても美しい棚田がある地区です。しかし、耕作放棄地も増え、荒れる一方なのが現状です。そこで、村や地主さん、地元企業、そして大学生とも協力しながら、美しい棚田を次世代に繋ぐための活動を始めました。外部の人と田植えや稲刈りを一緒にすることで、学生たちも地域の人たちも、ただの「見学」や「観光」とは違うつながりを感じられます。この地区は観光客の受け入れには慣れていませんが、こうした取り組みを通じて、少しずつ地域の外の人々と関わることに抵抗がなくなればと願っています。
また、企業との連携で棚田のオーナー制度も活用しました。こうした活動は、企業のCSR活動としても地域貢献に繋がっています。
観光も、村の人々や地域に関わることで、より深い体験ができるようにしたいです。たとえば、草刈りや種まきを組み込んだ宿泊プランを作り、観光客が「明日香村の一員」として地域に関わる仕組みを整えていくのも一つの道です。観光地としての明日香村を、持続的に成り立たせるためには、一過性ではない「関わり続ける観光」を目指すことが重要だと思っています。そのためには地域の人が無理なく続けられる体制を整えていくことが欠かせません。村と協力して仕組み作りやサポート体制を整え、僕自身もプレイヤーとして積極的に関わり続けていくつもりです。
明日香村には、「村の景観を守りたい。」という思い、観光客に「美しい明日香を見てもらいたい。」という思いを持つ人も多くいます。だから僕も、この村の未来を支えるために、村全体の景観を守り、魅力を伝えるための活動に力を入れていきたいと考えています。
ポカ・フレール オーナー 中北毅さん Profile
2007年に橿原市で開業。2015年に明日香村に移転。4年前から棚田と関わり始め、農閑期に草刈りイベントや棚田キャンプを毎年開催。
最終更新日:2025/03/12