奈良県観光局では地域の課題解決と持続可能な発展をめざし、「奈良の観光地域づくり」について取り組んでいます。奈良県庁の思いや、地域のキーパーソンのインタビューを掲載していきます。
※本記事は月刊奈良2024年12月号で掲載した記事と同じ内容です。
三奇楼は戦前まで料亭として栄え現在の建物は2006年まで住まいされていた後、長らく放置されていました。かなり劣化が進んだ状態でしたが、その重厚な造りと独特の風情に魅了され、再び人々が集まる場所へと改修し、2015年にゲストハウス三奇楼としてオープンしました。
私の本業は工務店の社長ですが、地元の青年部に20年ほど前に入部し、当時のリーダーと共に大きなイベントを開催した経験もあります。当時、地元の仲間たちと一緒に町を盛り上げようとイベントを開催しましたが、一時的な賑わいは作れたものの、イベントが終われば熱気も消え、次の日には静けさが戻るさみしさを感じました。一時的なイベントは地域の活性化にはつながらないなと。この経験が、「日常的に人が集まり、交流できる場をつくりたい」という現在の活動の原動力になっています。
三奇楼は、ただ泊まるだけでなく、地域の人と訪れる人が自然に交流し、新しいつながりを生み出す場所です。これまで、イベントなどを定期的に開催し、地元の皆さんと訪れた人が一緒に楽しめるよう工夫してきました。特にデッキでのジャズライブやディナーなどは、参加した皆さんにとっても記憶に残るイベントとなりました。
また、『SAGOJO』が町の関係人口創出事業で企画したTENJIKU吉野も拠点として活用していますが、参加した方の中には、期間が終わっても、自らが関わった行事や農作業体験などを毎年手伝いに訪れる人も。多拠点居住サービス『ADDress』では、全国から訪れる人々が長期滞在しますが、宿泊者同士や地域の方との交流も生まれました。こうした取り組みは、移住者を増やすという数字で見える部分ではなくて、地域に関わる人を継続的に増やしています。
来年は10周年を迎えます。これまで少なめだった海外のお客様も訪れてくれるよう、滞在すると日本の田舎の温かさを感じてもらえるようになればいいなと思っています。
三奇楼が地元の人々や訪れる人々にとって「帰りたくなる」場所であり続け、次の世代にも受け継がれるように、今後も丁寧に成長させていきたいです。
ゲストハウス 三奇楼 オーナー 南達人さんProfile
南工務店代表。大阪の構造設計事務所で働き、地元吉野に29歳でUターン。2015年からゲストハウス三奇楼の運営をはじめる。
最終更新日:2025/03/12