奈良県観光局では地域の課題解決と持続可能な発展をめざし、「奈良の観光地域づくり」について取り組んでいます。奈良県庁の思いや、地域のキーパーソンのインタビューを掲載していきます。
※本記事は月刊奈良2025年1月号で掲載した記事と同じ内容です。
吉野山の吉野荘 湯川屋は訪れる方に吉野の自然や文化を体験していただくことを大切に、吉野山ならではの魅力を感じてもらえるよう努めています。当宿のお風呂は人気のひとつです。2020年には水面と景色や空が一体化して見えるように露天風呂をリニューアル。日帰り入浴もしていただけるようになりました。
現在は吉野山観光協会の会長も務めています。この地域は長年、桜を中心とした観光で栄えてきましたが、近年は新しい課題に直面しています。今までは吉野山の事業者が一致団結して、観光客を呼び込もうとしていましたが、今はインターネットがあり、個々に動きがちです。地域全体としての活力が失われつつあり、協力体制の再構築が急務です。私が会長になってからは、業務の効率化や活動内容の見直しに取り組んでいます。
咋年2024年は「紀伊山地の霊場と参詣道」が世界遺産登録20周年を迎え、吉野山でも多くのイベントを開催し、秋は交通規制をするほど好評となりました。最近は海外のお客様も多いです。
協会員には皆自分の事業があります。人手が必要なイベントは店を閉めなければ出られないような小規模の店が多く、負担が大きい。ライトアップやクーポン発行は、当日に手をかけずとも楽しんでいただける取り組みとして、咋年からはじめたものです。
私は吉野山で生まれ育ちましたが、若いころはこの土地が好きになれず、一時は企業へ就職していました。桜の名所は他にもあると思っていたんです。でも、吉野山を訪れた人は口を揃えて「素晴らしい!」という。その声を聞いて、あらためて山の上まで桜を見に行きました。吉野山の一目千本の桜は、本当に、格別に綺麗だと感じました。
吉野山はただ桜を楽しむだけでなく、歴史に関わりの深い場所です。一つの時代だけではなく、時代の流れとともにたびたび登場します。金峯山寺と修験道という、信仰という観点でも興味をもっていただけると思います。
湯川屋 代表取締役社長 山本義史さんProfile
1959年吉野山生まれ。一般企業を退社後、1986年から湯川屋16代目館主となる。1992年株式会社吉野荘湯川屋を設立、2016年に代表取締役に就任。2023年から吉野山観光協会長。
最終更新日:2025/03/13