奈良、旅もくらしも

奈良の観光づくりキーパーソンINTERVIW 角甚 角谷金太郎さん


 洞川温泉の旅館「角甚」は江戸時代中期に創業し、約350年の歴史を持つ宿です。学生時代は地元から出ていましたが、15年ほど前に戻り、経営に携わっています。私が戻ってきた頃は、大峯参りをする修験道の行者たちが徐々に少なくなっており、地域全体が観光の在り方を模索する時期にありました。当宿では洞川の行者旅館の特徴である大部屋の旅館から、全6室の露天風呂付客室などを備えた宿へと館内リニューアルを進めました。

 洞川温泉街の活性化を目指す中で、新たな取り組みとして、少し離れた場所に2022年からグランピング施設も整備しました。ここでは、洞川の美しい自然に囲まれながらアウトドアを楽しむことができます。さらに、温泉街唯一の旅館が運営する外湯施設では、日帰りで気軽に旅の疲れを癒していただけます。

 洞川温泉では近年、国内外からのお客様も以前より増えてきました。特に欧米やアジア諸国からの訪問者が多く、グローバル対応が求められるようになりました。私たちは海外スタッフもおり、多言語対応の情報発信に力を入れています。

 一方で、地域が抱える課題も少なくありません。若い世代の後継者不足、空き家の活用問題、観光施設の維持など、解決すべきテーマは山積しています。

 数年前からはコロナ禍中に地元の若手とともに「宵々天川」という活動をはじめました。「宵々天川」活動のひとつとして、旅館街にあった提灯が老朽化していることもあり、新たに約500個の提灯を灯して、宿泊しているお客様に洞川の夜の風情を味わって頂けるようにしました。手持ち提灯を貸し出し、浴衣に着替えて下駄を履き、非日常の雰囲気を楽しんでいただく工夫もしており、好評です。提灯の付け替え資金や人員の面が課題です。今年も提灯の付け替えをするため、クラウドファンディングにも挑戦しました。

 宿のことや地域のこと、今後も考えることは多岐に渡りますが、行政や地元の方々と連携もしつつ、活動していきます。


角甚 角谷金太郎さんProfile

1987年生まれ。角甚14代目当主。若手で構成する天川村の団体「宵々天川」の立ち上げ時からのメンバー。

最終更新日:2025/03/13

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