奈良、旅もくらしも

奈良の観光づくりキーパーソンINTERVIW 風庵 中嶋乾二さん


 蕎麦屋「風庵」を開業したのは2000年のことです。父の代にはガソリンスタンドや喫茶店など様々な事業をしていましたが、喫茶店が面する国道の交通量が減少したことで苦戦する中、新たな店のありかたを模索した結果、蕎麦屋という形に行き着きました。

 ここ、十津川村は林業が盛んだった村です。農業よりも林業や建設業が主流で、観光業が遅れて発展してきました。私たちの店も当初は地元の人々の利用が中心でしたが、近年では観光の方の来店が増えてきました。特に十津川温泉や玉置神社を目当てに訪れる方々が多く、道路事情が良くなったことで日帰りで村を訪れる人も増えました。

 私が学生時代に家族の手伝いをしてきたころにはすでにおきていたことですが、特に土日や祝日には繁忙を極め家族総出で働くことになり、学生だった私は遊ぶ余裕がないほどでした。一方で、平日は閑散としています。天候や気候、季節の影響も大きいです。メニューを工夫して効率化を図っています。

 この村の自然や文化、食材の魅力を最大限に活かしたいとも思っています。蕎麦の実は他県から取り寄せていますが、地元の水や空気が蕎麦の味わいを引き立ててくれるんです。地元のキノコや山菜を使ったメニューも好評です。特産品を活かしたメニューを提供することで、村の良さを伝えることもできます。キノコはふるさと納税の返礼品にもなっていますしね。

 地域全体としては課題が多いです。人口減少や高齢化が進む中、若い世代が都会に出て行き、戻ってくる人は少ない。移住者が来ても定住せず、短期間で離れてしまうことが多いのも現実です。空き家問題も深刻で、住める状態の良い物件が少ないため、新たに移住や開業を考える人々にとってハードルが高くなっています。労働力の確保も難しい。飲食店が少なくて、繁忙期には昼食難民が出てきてしまっています。商売として成立する形でお店が営業でき、観光で訪れた方の期待に村内で応えられるかたちで発展していきたいです。


風庵 中嶋乾二さんProfile

1983年2月11日生まれ。高校時代より 大阪の蕎麦屋にて修行。大学では 経営学を専攻しつつ卒業後は家業を継ぎ、今年で25年目を迎える。

最終更新日:2025/03/14

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