奈良県観光局では地域の課題解決と持続可能な発展をめざし、「奈良の観光地域づくり」について取り組んでいます。奈良県庁の思いや、地域のキーパーソンのインタビューを掲載していきます。
※本記事は月刊奈良2025年3月号で掲載した記事と同じ内容です。
私たち大和飛鳥ニューツーリズムは、教育旅行を中心に、地域と観光をつなげる事業を展開しています。もともとは商工会の青年部の活動からスタートし、2011年に団体を設立。教育旅行の受け入れを進めながら、徐々にインバウンドの対応も広げてきました。最初の取り組みは、地域の家庭に宿泊し、地元の人々と交流する民泊の仕組みづくりでした。当初は反発もありましたが、少しずつ理解が進み、今では120軒ほどのホストファミリーが協力してくれています。受け入れる生徒たちは、奈良の歴史的な環境の中で生活体験をし、共同調理などを通じて田舎の文化を学びます。修学旅行で訪れた生徒が、成長して再び地域を訪れることも増えてきました。
インバウンドについては、シンガポールやマレーシアをはじめ、最近ではアメリカやヨーロッパからの訪問も増えています。特に「ホームステイをしたい」というニーズは高いです。現在は、個人旅行者向けの予約システムを整え、口コミを活用した集客強化を進めているところです。
一方で、教育旅行は地域貢献の面では意義が大きいものの、収益化が難しい課題があります。そこで、企業研修の受け入れや、地域と連携した新たな観光プログラムの開発にも取り組んでいます。例えば、企業の新入社員研修を地域で実施し、地元との関係性を深めながら持続可能な形で事業を発展させることを目指しています。
また、2026年の「飛鳥・藤原の宮都」世界遺産登録に向けて、私たちのような民間事業者がプラットフォームとなり、観光資源を活かした取り組みを進めていく必要があります。
コロナ禍では事業が大きく落ち込みましたが、地域や行政の支援もあり、ホストファミリーとの関係を維持できたことが大きかったです。現在は、少しずつ回復しつつあり、新たな取り組みも進めています。観光を通じて地域と人をつなげることを大切にしながら、活動を続けていきます。
一般社団法人大和飛鳥ニューツーリズム 下田正寿さんProfile
大和飛鳥ニューツーリズム業務執行理事。明日香村商工会経営指導員。教育旅行の受け入れなどを推進し、地域と観光をつなぐ事業に尽力している。
最終更新日:2025/03/14