奈良県観光局では地域の課題解決と持続可能な発展をめざし、「奈良の観光地域づくり」について取り組んでいます。奈良県庁の思いや、地域のキーパーソンのインタビューを掲載していきます。
※本記事は月刊奈良2025年3月号で掲載した記事と同じ内容です。
やまとびと株式会社は、もともと印刷会社として地域の魅力を伝える事業を展開してきました。現在は、印刷業に加え、デジタル事業や観光業にも力を入れています。特に、観光業では着地型旅行に特化し、奈良県内の地域資源を活用したツアーを企画・運営しています。
旅行事業の特徴は、県内外の個人や団体、企業を奈良に呼び込み、地域経済に貢献する点にあります。弊社では奈良の歴史や文化を深く体験できるツアーを提供。また、奈良県産の食材を使った食文化体験や、農業・林業と結びついたツアーも手がけています。地元の生産者や職人と連携し、単なる観光ではなく、奈良の暮らしや文化に根ざした体験を提供できることが強みです。
さらに、奈良公園周辺などの観光地にとどまらず、県南部への誘客にも取り組んでいます。外国人観光客が増加する中、奈良市内に集中するのではなく、南部の地域にも足を運んでもらうための仕組みを構築中です。例えば、歴史的な社寺や自然資源を活かした特別ツアーを企画し、地域の事業者や社寺と協力しながら受け入れ体制を整えてきました。
また、やまとびとが発行する季刊誌『やまとびと』では、奈良の文化や観光資源を深掘りし、奈良に関心のある人々へ発信。冊子だけでなく、WebやSNSを活用したデジタルマーケティングにも力を入れ、奈良の魅力を広く伝える取り組みを行っています。
地域事業者との連携は重要ですが、行政との協力も欠かせません。しかし、観光施策と現場の実情にはズレが生じることも課題です。特に、県や国が推進するインバウンド政策では「観光客を増やす」ことが重視されがちですが、やまとびとは「地域にとって本当に必要な観光とは何か」を大切にし、地域の人々とともに持続可能な観光の形を模索しています。
今後の目標は、外国人観光客をさらに奈良の広域へ誘導し、地元の事業者と連携しながら、奈良ならではの観光体験を提供すること。単に観光客を増やすのではなく、「奈良に来てよかった」「また訪れたい」と思ってもらえる観光の在り方を追求していきます。
やまとびと株式会社 堀井彬孝さんProfile
桜井市生まれ。同志社大学在学中にフィリピンに留学、卒業後、IT企業にてシステム企画を担当。やまとびと株式会社に入社後は、営業と旅行企画に携わる。
最終更新日:2025/03/14