奈良、旅もくらしも

奈良国立博物館 開館130年記念特別展『超 国宝―祈りのかがやき―』レポート

奈良博でも過去最大規模となる国宝展

奈良国立博物館(奈良博)の開館130周年を記念した特別展『超 国宝―祈りのかがやき―』が開幕しました(※前期展示:4/19~5/18、後期展示:5/20~6/15)。

この特別展は奈良博でも過去最大規模となる国宝展で、奈良博や奈良の歴史に関わりの深い国宝を中心に、“未来の国宝”ともいうべき重要作品など、国宝約112件・重要文化財約16件を含む約143件が展示されます。

奈良博らしく仏教美術と神道美術に特化した内容となっており、会場には奈良の至宝を中心に、日本が世界に誇る名品の数々がずらりと並び、その豪華さに圧倒されるほど。奈良の先人たちが大切に伝えてきた文化の重みと広がりがひしひしと感じられ、本当に素晴らしい内容でした!

受け継がれてきた奈良の至宝が勢ぞろい

国宝「観音菩薩立像(百済観音)」(飛鳥時代・7世紀、奈良・法隆寺)

特別展の第1章は「南都の大寺」です。
まず来館者を出迎えてくれるのは、国宝「観音菩薩立像(百済観音)」(飛鳥時代・7世紀、奈良・法隆寺)。日本を代表する流麗な古仏で、ぐるりとすべての角度から至近距離で拝見できる貴重な機会です。長身で神々しい姿から畏怖の念すら感じられるでしょう。

この百済観音像は、修理後の明治44年(1911)~昭和5年(1930)にかけて、奈良博の仏像館(旧陳列館)に展示されていました。この期間中に哲学者・和辻哲郎がその著書『古寺巡礼』の中で「百済観音」と紹介したことでこの名称が一般化したのだそうです。

左手前:国宝「薬師如来立像」(奈良時代・8世紀、奈良・唐招提寺)

第2章「奈良博誕生」では、東大寺で開催されていた展示「奈良博覧会」から、国内2番目の国立博物館として奈良博が誕生するまでの歩みにまつわる文化財が並びます。

国宝「薬師如来立像」(奈良時代・8世紀、奈良・唐招提寺)などを筆頭に、会場には奈良博の歴史を伝える貴重な文化財や資料がずらりとそろっています。

重要文化財「帝国奈良国立博物館本館 表昇降口雛形」(1894年、奈良国立博物館)

重要文化財「帝国奈良国立博物館本館 表昇降口雛形」(1894年、奈良国立博物館)の隣には、かつての奈良国立博物館 本館(現在の仏像館)の展示風景を撮影した写真が大きなパネルとなっています。大安寺や元興寺、海龍王寺などの寺宝が一堂に会した、とても濃密な空間だったことが伝わり、奈良を中心とした仏教美術の紹介や保護に、奈良博が果たしてきた役割の大きさが理解できます。

国宝「重源上人坐像」(鎌倉時代・13世紀、奈良・東大寺)

会場全体に共通することですが、「展示品との距離が近い」のも大きな魅力です。国宝「重源上人坐像」(鎌倉時代・13世紀、奈良・東大寺)も至近距離からしっかり拝見できます。目尻の細かなしわまではっきりと観察でき、そのリアリズムにあらためて驚かされました。

重要文化財「釈迦如来立像」(鎌倉時代・1258年、奈良・唐招提寺 ※前期のみ展示)

重要文化財「釈迦如来立像」(鎌倉時代・1258年、奈良・唐招提寺 ※前期のみ展示)は、釈迦の生き写しと信じられた京都・清凉寺の国宝「釈迦如来立像」の模像です。後期には元となった清凉寺像が展示されます(5/20~6/15)。前期後期で多くの展示替えもあり、日をあらためて2回拝見しておくだけの価値のある豪華さです!

国宝「大日如来坐像」(平安時代・1176年、奈良・円成寺)

国宝「大日如来坐像」(平安時代・1176年、奈良・円成寺)は、鎌倉時代の大仏師・運慶が二十代に手掛けた、現在知られている中で最初期の作。凛とした佇まいが素晴らしい傑作です。

奈良の至宝が勢ぞろいしたような印象を受けるほど、仏像の展示は圧巻です!

国宝「菩薩半跏像」(平安時代・8世紀、京都・宝菩提院願徳寺)

特別展の最後の一室は、国宝「菩薩半跏像」(平安時代・8世紀、京都・宝菩提院願徳寺)のためだけの空間となっています(後期は展示替えあり)。8世紀に造像されたとは信じられないほどの気高く均整の取れた彫刻作品ですので、ぜひ360度すべてのアングルからじっくりと拝見してみてください。

国宝「天寿国繡帳」「辟邪絵」なども必見

国宝「天寿国繡帳」([原本部分]飛鳥時代・622年頃 [模本部分]鎌倉時代・1275年、奈良・中宮寺 ※展示期間:4月19日~5月15日)

仏像だけではなく、絵画など他の仏教美術も素晴らしい作品が目白押しです。

国宝「天寿国繡帳」([原本部分]飛鳥時代・622年頃 [模本部分]鎌倉時代・1275年、奈良・中宮寺 ※展示期間:4月19日~5月15日)は、聖徳太子が亡くなった後、推古天皇の命で作られた刺繡の帷(カーテン)の残欠です。遠目からは絵画のようですが、すべて刺繡です。間近からじっくりと拝見することで、あらためてその美しさに感動できます。

国宝「辟邪絵(へきじゃえ)」(平安時代・12世紀、奈良国立博物館 ※前期のみ展示)

国宝「辟邪絵(へきじゃえ)」(平安時代・12世紀、奈良国立博物館 ※前期のみ展示)は、疫病や災いを引きおこす鬼たちとたたかう神々の姿を、勇ましくもユーモラスに描いた作品です。

同時期の国宝「病草紙」(平安時代・12世紀、京都国立博物館 ※前期のみ展示)も展示されており、こちらもとてもユニーク。いずれも当時の人々の想像力の豊かさに驚かされます!

異形の鉄剣「七支刀」も間近で拝見できます

国宝「金地螺鈿毛抜形太刀」(平安時代・12世紀、奈良・春日大社 ※前期のみ展示)

後半の神道美術の展示も見どころばかりの内容です。
国宝「金地螺鈿毛抜形太刀」(平安時代・12世紀、奈良・春日大社 ※前期のみ展示)は、春日大社の本殿に奉納されていた豪華絢爛な太刀。鞘には竹林で雀を追う猫の姿が描かれています。

国宝「金地螺鈿毛抜形太刀」(平安時代・12世紀、奈良・春日大社 ※前期のみ展示)※部分拡大

「金地螺鈿毛抜形太刀」に螺鈿で描かれた猫たち。決して可愛らしいだけではない、野性味もある猫らしい仕草が描写されています。猫好きなかたは必見です!

国宝「吉祥天像」(奈良時代・8世紀 ※展示は5月6日まで)と国宝「八幡三神坐像」(平安時代・9世紀、ともに奈良・薬師寺)

国宝「吉祥天像」(奈良時代・8世紀 ※展示は5月6日まで)と国宝「八幡三神坐像」(平安時代・9世紀、ともに奈良・薬師寺)など、古代美人画の最高傑作ともいえる作品と、当初よりの彩色が鮮やかに残る貴重な神像たちも並びます。

国宝「七支刀」(古墳時代・4世紀、奈良・石上神宮)

大きな注目を集めているのが、石上神宮に伝来する異形の鉄剣、国宝「七支刀」(古墳時代・4世紀、奈良・石上神宮)です。百済の王室が倭王のために作り、贈ったと考えられており、百兵を退けるという不思議な呪力を持つ刀とされます。

表と裏、両面に刻まれた文字もはっきりと読み取れます。これだけ間近で拝見できる機会は滅多にありませんので、どうぞお見逃しなく!

今回の特別展ではグッズも凝っています。
ユニークな七支刀の形状を活かした「七支刀ペンケース」(※完売)はすでにSNSでも大きな話題となっていますし、手ぬぐいや縦に長いトートバッグ、さらには伝統的な玩具「吹き戻し(ピロピロ)」まで!

さらに、大人気の「すみっコぐらし」とのコラボグッズなども並びますので、じっくりと時間をかけてご覧ください。


■奈良国立博物館開館130年記念特別展『超 国宝―祈りのかがやき―』

  • 会期:2025年4月19日(土)~6月15日(日)
    ※前期展示:4/19~5/18、後期展示:5/20~6/15
    ※会期中、一部の作品は展示替えが行われます。
  • 休館日:月曜日(4/28 [月]・5/5 [月・祝] は開館)、5月7日(水)
  • 会場:奈良国立博物館 東・西新館
  • 開館時間:9:30~17:00(※入館は閉館の30分前まで)
  • 観覧料:一般 2,200円、高大生 1,500円、中学生以下 無料
    ※本展の観覧券で、名品展(なら仏像館・青銅器館)も観覧できます。

■関連ページ

奈良国立博物館開館130年記念特別展『超 国宝―祈りのかがやき―』公式サイト

最終更新日:2025/04/24

TOPへ