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2025年 第77回 正倉院展 開催概要発表!

  2025年7月、今秋に奈良国立博物館で開催される「第77回 正倉院展」の概要が発表されました。期間は2025年10月25日(土)~11月10日(月)まで。ここでは、先日発表された開催概要から、今年の見どころをご紹介します。

正倉院展とは?

 正倉院は、今から約1300年前の東大寺の大仏建立で知られる聖武天皇の遺愛の品々や、その当時の天平文化の粋を伝える貴重な品々が収められている宝物庫です。その数は約9,000件にも及びます。あまりに膨大なため、毎年その一部のみが展示され、「今年はどんな宝物が見られるのか」と多くの人が訪れる、奈良国立博物館恒例の展覧会です。

 正倉院宝物は世界的にも非常に価値があるものです。天皇が関わる宝物であるだけに、素材・技術・美術のすべてにおいて一級品であるというだけではありません。時代の変化や災害、戦果を乗り越え、1300年近くというこれほど長い期間を経ながらも、これだけまとまった形で守り伝えられているという点で、世界的にみても極めて希少です。

 また、聖武天皇の時代は、遣唐使により、唐(現在の中国)から様々な文化がもたらされました。唐は、ユーラシア大陸の東西を結ぶ交易路「シルクロード」の東の終着点であり、その文化圏にはローマやペルシャ、インドなど、ユーラシア大陸の多様な文化があふれていました。正倉院の宝物は、古代の国際性、美術性、文化史を伝える資料としても価値があります。

 2025年は大阪万博の開催年でもあり、外国人観光客も増加中です。日本だけでなく、世界の人々に知ってもらう機会となることでしょう。

見どころ「シルクロード色の濃い、華やかな宝物」

 今年の出陳ラインナップを見ると、シルクロードを通じて日本にもたらされた、華やかで国際色豊かな宝物が多く含まれているように感じました。

 たとえば、ポスターのメインビジュアルを飾るのは、深い紺色が美しいガラス器「瑠璃坏(るりのつき)」。ガラス部分は西方(西アジア)製、脚部は東アジア製と考えられており、シルクロードを経て異なる地域の工芸技術が一つの器に集約されていることがうかがえます。

中倉70 瑠璃坏 附 受座(ガラス製のさかずき)(写真提供:宮内庁正倉院事務所)

 「平螺鈿背円鏡(へいらでんはいのえんきょう)」は、『国家珍宝帳』に記載された、聖武天皇ゆかりの鏡20面のうちの1面です。ヤコウガイを用いた螺鈿に、トルコ石やラピスラズリなどをあしらった華やかな装飾が施され、シルクロード各地で産出された素材が使われています。中国で製作され、日本にもたらされたものと見られています。

北倉42 平螺鈿背円鏡 附 題箋(螺鈿飾りの鏡)(写真提供:宮内庁正倉院事務所)

 そのほか、寄木細工による格調高い「木画紫檀双六局(もくがしたんのすごろくきょく)」や、赤・緑・藍などに染められた羊毛製フェルトの敷物「花氈(かせん)」など、由来を知らずとも圧倒的な美しさを放つ工芸品の出陳が予定されています。

見どころ「聖武天皇の時代と暮らしを感じる宝物」

 聖武天皇の時代の雰囲気や生活の様子を想像させるような品々も並びます。

 「牙笏(げしゃく)」は象牙製の笏です。笏は天皇や高官が威儀を正すために手に持って用いたものです。天武天皇から、持統、文武、元正、聖武、孝謙と、六代の天皇に継承された「赤漆文欟木御厨子(せきしつぶんかんぼくのおんずし)」に納められていたとされ、正倉院に伝わる笏の中でも格別の由緒を感じさせる一品です。

北倉10 牙笏(象牙製の笏)(写真提供:宮内庁正倉院事務所)

 「鳥毛篆書屏風(とりげてんしょのびょうぶ)」は、草花や飛鳥などの地文様の上に、各八文字の篆書と楷書を交互に表した屏風です。篆書の部分にはニホンキジなどの羽毛が貼り付けられ、金箔が散らされています。屏風は部屋の間仕切りなどに用いるものでした。書かれているのは君主座右の格言で、聖武天皇の身近に置かれるにふさわしい品です。

見どころ「奈良時代のさらに先へ」

 正倉院宝物は、長らく勅封により厳重に守られてきました。そのため、後世に記録される際には、当時の為政者や権力者が関与していたことがわかる例もあります。

 「天平宝物筆(てんぴょうほうもつふで)」は、東大寺の大仏の開眼法要(天平勝宝4年〈752〉)に用いられた特大の筆です。この筆に全長198メートルの藍染めの絹紐「縹縷(はなだのる)」を結び、参列者はこの紐を通じて筆の功徳を得たといいます。聖武上皇、光明皇太后、孝謙天皇もこの筆を通し、開眼を行いました。
 さらに、鎌倉時代の文治元年(1185)に行われた大仏再興時の開眼法要では、後白河法皇がこの筆を実際に使用したことが筆の線刻銘により確認されています。

中倉35 天平宝物筆(大仏開眼に用いられた筆)(写真提供:宮内庁正倉院事務所)

 「黄熟香(おうじゅくこう)」は、蘭奢待(らんじゃたい)の名でも知られる香木です。多数の切り取り跡があり、なかでも足利義政・織田信長・明治天皇による切り取りには、それを示す紙箋が添えられています。現在も香気成分が残存しており、時代を超えて人々を魅了してきた香りを留めています。

中倉135 黄熟香(香木)(写真提供:宮内庁正倉院事務所)

「正倉院 THE SHOW」とあわせてぜひ

 2025年には、体験型展示の特別展「正倉院 THE SHOW―感じる。いま、ここにある奇跡―」も開催されています。会場は、大阪歴史博物館(6月14日〈土〉〜8月24日〈日〉)と、東京・上野の森美術館(9月20日〈土〉〜11月9日〈日〉)です。

 こちらでは、正倉院宝物の実物は展示されていません。宮内庁正倉院事務所の全面監修での特別展で、大型スクリーンいっぱいの超高精細映像と再現模造によって宝物を立体的・感覚的に楽しむことができます。

 たとえば、前述した「平螺鈿背円鏡」は様々な角度からのきらめきを、単眼鏡でも見えないような細部まで鑑賞可能です。「瑠璃坏」の復元過程を映像で追体験できるほか、「幻の香り」とされる「黄熟香」(蘭奢待)の香りも、実物の香木から採取した香りをもとに調香師が再現。正倉院宝物の素晴らしさに、通常とは違った感じ方で触れることができます。


展覧会名:第77回 正倉院展

  • 会 期:2025年10月25日(土)~11月10日(月) ※会期中無休
  • 会 場:奈良国立博物館 東西新館
    所在地 〒630-8213 奈良県奈良市登大路町50番地
  • 開館時間:8:00~18:00
    ※金・土・日曜日、祝日は20:00まで
    ※入館は閉館の60分前まで
  • 出陳件数:出陳宝物 67件(北倉17件、中倉19件、南倉28件、聖語蔵3件)
    うち6件は初出陳
  • 主 催:奈良国立博物館
  • 特別協力:読売新聞社
  • 観覧券情報:日時指定券を販売予定です。詳細は8月下旬にリリースいたします。
  • 奈良国立博物館問い合わせ:050-5542-8600(ハローダイヤル)
  • 奈良国立博物館ウェブサイト:https://www.narahaku.go.jp/
  • 正倉院展ホームページ:https://shosoin-ten.jp/
  • 交通案内:近鉄奈良駅下車 徒歩約15分。またはJR奈良・近鉄奈良駅から市内循環バス外回り「氷室神社・国立博物館」下車すぐ。

 

最終更新日:2025/07/22

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