カメラ仲間でよく言う「けあらし(毛嵐・気嵐)」が出そうな条件となった早朝、室生湖へ向かいました。冷え込んだ朝に高い水温と冷たい空気が触れ合って発生する蒸気霧のことで、正しくは「湖沼霧」「川霧」と呼ぶようです。 室生湖はダムによる人口湖で、冬の間(11月~5月下旬)は水位が高く、もともと自生している樹々による水没林が見られ、風のない日は湖面への映り込みが幻想的です。 田植えが始まると徐々に水位が下がり、濡れ地蔵と呼ばれるお地蔵さまが姿を現します。 そして夏の間は湖は消え、美しい草木の野原が広がるという二つの顔を見せてくれる不思議な魅力のある場所です。
撮影/執筆者紹介
連載「わたしの奈良暦」
今月の撮影者/Naturaltime+m(Etsuko Makari)
最終更新日:2021/05/15
編集部から
さまざまな表情や仕草を見せる鹿たちや、たおやかな魅力に溢れる草花、笑い声やその場の香り・温度も伝わるようなポートレートやイベント風景、静かに、けれど確かにそこにある奈良の風景。Naturaltime+mさんの写真からは、やさしいものはやさしく、おいしいものはおいしく、しっとりしたものはしっとりと、その佇まいや質感、重さ、肌触りといったことが、すんなりと伝わってきます。小箱に封じた大切なものを、見せてくれるようなNaturaltime+mさんの撮る奈良を、皐月・水無月・文月の3か月にわたり、お届けします。