文/松島靖朗 タイトル絵/上村恭子
久しぶりの更新になりました。お盆も終わり休むまもなくお彼岸の準備が続いています。お寺での修行生活は、繰り返される年中行事や季節ごとを毎年変わらずに続けていくことなんだろうなと、行事が続くこの季節、とくに感じます。
それにしてもこの毎年変わらずに・・・がむずかしい。東大寺さんの修二会(お水取り)が1300年近く変わらずに続いていることの凄さ。
コロナ禍で「例年通り」がより難しくなってきています。住職を務めるお寺には、ありがたいことにお彼岸やお盆などの季節の法要に、毎回100名近い方々がお参りくださいます。遠近よりお越しいただくお説教師さまのお話を聞き、皆でお食事をいただき、そして大きな声でお念仏やお経さんを唱える。集まる皆さんの多くは70代〜90代でおられますから、こりゃ、今一番やったらあかんこと・・・なわけですね。
三密をさけ、儀礼儀式の肝要なところは継続する試行錯誤が続いています。そしてしばらくはその状態が続きそうです。
さてさて、今日のお話は小学校4年生だった頃の出来事です。当時、御内仏さまとしてひっそりお祀りしていた仏さまが、なんと鎌倉仏師の快慶さんの作の仏像であることが調査で判明、国の重要文化財に指定されるという事件!が起こりました。昭和60年6月のことです。それ以来、様々なメディアで仏さまのことが取り上げられ、それをきっかけに多くの方がお寺に来られるご縁となりました。
なんともありがたい出来事ですが、当時の僕はお寺に生まれたこと、将来お坊さんになって、お寺の跡取りとして、住職になることを期待されていることが嫌で嫌でしかたなく、どうやったらお寺から逃げ出すことができるか?そんな事を考える毎日を過ごしていました。
一番最悪・・・(こら笑)だったのは、学校の校外学習でお寺が見学コースに入ってしまったこと。同級生たちの「え、このお寺ってお前んちやんな!?」と、せっかくひっそりと暮らしていこうとしていた僕の目論見が大きく揺さぶられた瞬間でもありました。
もう。「快慶さん。なにしてくれてんねん。あんたのせいで、みんなお寺のこと、注目してしまうやんけ!お寺が注目されるってことは、なんか知らんけど僕にお坊さんになりなさいっていう人が増えてしまうやんけ!もう、ほんまに勘弁してや〜」
安養寺は浄土宗のお寺としてお念仏のみ教えをお伝えする念仏道場であり、そして村の檀家寺としてご縁のある方々のご先祖さまの菩提を弔うお寺であるわけですが、長い歴史の中で、とつぜん重要文化財をお祀りする観光寺院として注目されるようになってしまった出来事でした。
時を経ること三十数年、こうして住職になってお寺をお守りする立場になると、そのありがたさがよく分かるようになりました。「快慶さん。ありがとうございます。南無阿弥陀仏」
いまだ、この仏さまをお祀りするお堂(阿弥陀堂)でお勤めしながら思い浮かぶのは若かりし頃の「快慶さん。なにしてくれてんねん。」という涙目の少年の眼差しなわけですが。
さて、みなさんに突然ですがお知らせです。2021年9月18日(土)から26日(日)まで秋の特別拝観として安養寺で快慶作阿弥陀如来立像 特別ご開帳がございます。「奈良まほろばソムリエの会」「ナントなら応援団」の皆さまによるボランティアガイドあり、予約不要でお越しいただけます。ぜひ阿弥陀さまとのご縁にお参りくださいませ。
快慶作阿弥陀如来立像 特別ご開帳 開催情報
- 期 間 2021年9月18日〜9月26日
- 時 間 10:00~16:00(受付締切 15:30)
- 場 所 安養寺 阿弥陀堂
- 料金等 志納(おきもちで)
その他◎ご開帳にあわせて御朱印をお授けしております。安養寺本堂にお祀りするご本尊さまの拝観もいただけますが、時間帯によって本堂で法要がございますためお上がりいただけないことがございます。ご了承くださいませ。
安養寺へのアクセス
- 奈良県磯城郡田原本町八尾40番地(地図)
- 近鉄田原本駅下車 北へ徒歩20分 タクシーで5分
- 京奈和自動車道 三宅I.C.から車で10分。山門南側に駐車場(20台駐車可)がございます。
執筆者紹介
連載「ニシムクサムライ」
文/松島靖朗
最終更新日:2021/09/17
編集部から
松島さんは奈良県磯城郡田原本町にある安養寺のご住職です。わたしたちが松島さんを知ったのはTwitter黎明期。松島さんは手練れの投稿職人(?)でした。その後、松島さんが2014年にスタートさせた、お寺への「おそなえ」を、仏さまからの「おさがり」として頂戴し、経済的に困難な状況にあるご家庭へ「おすそわけ」する仕組み [おてらおやつクラブ] の活動は、2018年度グッドデザイン賞大賞を受賞するなどしながら共助の輪を広げています。度々驚かせてくれる松島さんの日常を、垣間見ることができるかも(できないかも)な連載です。