奈良、旅もくらしも

今月のおやつとうつわVol.9 TSUJIMURA&cafe kiton「ひみつの時間」、空櫁「オーバル皿 S」

TSUJIMURA&cafe kiton「ひみつの時間」
空櫁「オーバル皿 S」

仕事に学校、家事…毎日やることいっぱいで忙しいですよね。あわただしい日々を過ごしていると、ついつい自分のことをおろそかにしがち。たまには、おいしいお菓子で自分を甘やかしてみませんか。この連載では、奈良で手に入る素敵なおやつと器をご紹介します。お気に入りのおやつセットを用意して、ちょっと一息つきましょう。


11月に入り、平城京跡の荻が柔らかく光る季節になった。用事で朝早い電車に乗らなければならないことがあり、憂鬱な気分で座席に座っていたのこと。平城宮跡を横切る瞬間、視界が明るくなった。萩に朝露が乗ってキラキラしていた。陽の光を反射して、亜麻色のような淡い金色のような微妙な色を織りなす。身近にこんなきれいな風景が見られるなんて贅沢だなあ、と憂鬱な気分も吹っ飛んでしまう。今回はその萩のような、自然が生む美しい色のお菓子をご紹介。

いつもよりちょっと遠出をして吉野山まで。「TSUJIMURA&cafe kiton」は、吉野町にあるカフェで、コンビニのような小さな商店だった建物をリノベーションして誕生した。お母様が干菓子を作るのを子どものころから手伝っていた店主の辻村佳則さん。その影響を受けつつも、シンプルでオリジナリティのあるお菓子を製作している。

お店の中にはかわいい形の干菓子がたくさんあって迷ったが、一番目を引いた「ひみつの時間」を選んだ。透き通ったビンの中に小さな干菓子が縦に5つ並んでいる。最初に目にしたときは、白い干菓子が5つ入っているのだなと思ったが、よく見ると一つ一つ色が違う。下から順に少しずつ淡い色になっている。着色料は使っていないので、天然のグラデーションだ。5つの異なる種類の砂糖で作られており、古希・和三盆・本和香・琥珀・亜麻とそれぞれ名前がついている。「古希」は白砂糖、「和三盆」は讃岐地方で作られる和三盆糖、ほかの三つは黒糖。それぞれ風味や舌触りが全く違う。砂糖に種類があることは知っていても、その違いをここまで感じたのは初めて。いちいち感動しながら大事に頂いた。「買ってゴールじゃない。買った場所やその時のことを思い出すツールのような存在」としての物づくりをしていきたいという辻村さん。瓶を眺め、グラデーションを眺め、もう一度吉野に行きたいなと考えながらゆっくり味わう。その一連の流れがあってこそ完成するお菓子なのだと思った。

瓶の中に干菓子と説明書きが入っている。「ひみつの時間」(648円)
明るいところで見ると色の違いがはっきり分かる

今回の干菓子に合わせて選んだ器は、高畑にある雑貨店「空櫁」で販売されているお皿。冬空と荻の溶け合うような色をイメージしてセレクトした。陶芸家・佐野元春さんの作品で、実は店主の五井あすかさんの大学の後輩なのだそう。ある展示会がきっかけで交流が始まり、お店で取り扱うようになった。建築を学んでいた佐野さんの作品には独特の雰囲気と佇まいを感じる。無駄な装飾がなく、極めてシンプル。けれども、有無を言わせぬ存在感がある。店内の柔らかい明りの中で見るともちろん美しいが、私の持っている大したことのないテーブルに置いても、変に浮くことがない。それどころかテーブル自体がちょっとおしゃれに見えるほど。ずっしりした見た目に反して軽くて持ちやすい。大きなサイズもあり、パスタ皿にぴったりなのだそう。今回は、小さなお菓子をずらっと並べてみたが、あえて余白を残して真ん中にちょこんと置いてもかわいい。釉薬のかかり具合が揺らめく水のように見え、思わず見入ってしまう。静かな海を思わせる色合いなので、お刺身を載せても、とアイデアをいただいた。洋風な楕円のお皿にお刺身を合わせるなんて思ってもみなかった。青みがかった白い地に、艶のあるお刺身が並ぶのを想像する。きっと絵のようにきれいだろう。濃い色の布を敷いてもいいかもしれない。お話を聞きながら、試してみたくてうずうずしてしまった。

オーバル皿S (3,630円)
私の買ったものは裏面に青色がくっきり出ている

想いをもって物づくりをしている人たちと一緒にお仕事をしていきたいと語る五井さん。
作り手の想いやその背景、そしてそれを買った時の気持ち、そういった目に見えないものを大切にしようとする姿勢は今回取材させていただいたお二人の共通点かもしれない。流行ものではなく、長く使えるもの。いつ買ったのか思い出せないようなものではなく、買ったその日その時がありありと思い描けるもの。人の手で思いを込めて作られたものは、ただ買って使うだけがすべてではないのだ。私の物に対する考え方がまたひとつ成長したように感じた。

(記事・岡田菜友子)

TSUJIMURA&cafe kiton(ツジムラ アンド カフェキートン)
住所:奈良県吉野郡吉野町吉野山950
電話:0746-32-3032
営業時間:10:00~17:00
定休日:火・水
駐車場:有 (店と少し離れた場所に約10台分あります)
https://tujimura-yoshino.com


空櫁(そらみつ)
住所:奈良県奈良市高畑町1445-1
電話:080-6138-2957
営業時間:12:00〜18:00 /冬季(11月から3月)〜17:00 
定休日: 不定休(HPで確認をお願いします)
駐車場:有(店と少し離れた場所にあります)
http://soramitsu.com

最終更新日:2021/11/21

TOPへ
error: Content is protected !!