仕事に学校、家事…毎日やることいっぱいで忙しいですよね。あわただしい日々を過ごしていると、ついつい自分のことをおろそかにしがち。たまには、おいしいお菓子で自分を甘やかしてみませんか。この連載では、奈良で手に入る素敵なおやつと器をご紹介します。お気に入りのおやつセットを用意して、ちょっと一息つきましょう。
突然だが、奈良にはどうしてこんなに鹿がいるのかご存じだろうか。春日大社の祭神、武甕槌命(タケミカヅチノミコト)が茨城県の鹿島神社から真っ白な神鹿に乗ってやってきたと伝わるため、鹿は神の使いとして大切に保護されてきた。時々忘れてしまうけれど、そういえば恐れ多い動物だった……今回は、その「お鹿さま」のご神威にあやかれそうなお菓子をご紹介。
「鶴屋徳満」の「はくろく(白鹿)」は、神獣である白い鹿を模した最中で、キュートな見た目は食べるのをためらってしまうほど。今回は、事務所の目と鼻の先にある三条通店に伺った。白と薄い黄色の二種類購入し、一つは買ってすぐに頂いた。パリパリの皮の中に餡がぎっしり入っている。白い皮は普通の最中と同じ材料。「焼くけれども焦げ目はつけない」という絶妙な焼き加減で、雪のような白い皮になる。一度に食べてはもったいない気がしたので、もう一つは次の日に食べた。これがびっくりするほどおいしい。分厚い皮の外側はパリパリのまま、内側はほんの少し柔らかくなって、自然と2層になっていたのだ。歯を立てるとパリッ、もう少し力を入れるとじゅわっ。餡と皮が一体化している部分が癖になる。最中のほか、三笠焼(奈良のどら焼き)やカステラなどは、二日目になると味が落ち着いてよりおいしくなる。これを「蜜が回る」というのだそう。
今回もう一つ、奈良好きなら知っておきたいお菓子をご紹介。和三盆のお菓子「青丹よし」だ。有栖川宮熾仁親王殿下がデザイン及び命名され、今上天皇皇后両陛下も召し上がっている歴史あるお菓子。第二次世界大戦の間も、決して絶えさせぬようにと、国から特別に砂糖(和三盆)の配給を受けて作り続けられてきた。優しい色の奥に人々の苦労がしのばれる「青丹よし」を前に、背筋がスッと伸びる。
そんなお菓子に合うよう、洋風のつくりながら、どこか日本らしさを感じられる木製のお皿を選んだ。花びらのような形が特徴の「輪花」は、陶器によくみられるデザインだが、木製になると神社の装飾にも見える。家具職人でもある、作者の近藤雄士さんが特にこだわっているのは、インテリアとの調和。いくら美しいお皿でも、主張が強すぎたり、食卓の邪魔になったりしてはもったいない。華やかお皿を買ったものの、いつの間にか「お客様用」になり、食器棚の奥にしまい込んで……こんな方は少なくないはず。存在感やデザイン性を持ちつつも、あくまで普段使いしやすいデザインを心掛けている。
今回のお皿は家具と同じ栗の木で作られているが、開発などで伐採されてしまった木でランプシェードやボウルも制作されているそう。木を無駄なく使う工夫だ。陶器のデザインを木皿に取り入れたり、ゴミになってしまう木材を個性的なインテリアに生まれ変わらせたり。いったいどこからアイデアがわいてくるのか気になってお聞きしたところ、美術展に足を運んで目を肥やすものも大切だが、何気なく目にしたものが作品作りのヒントになっているという。考え込んで作るより、「あっ」と思いついて作品にしてしまうことが多いのだとか。構えすぎないことがコツなのかもしれない。
今回は、連載始まって以来の恐れ多い回になってしまった。鹿の最中にパステルカラーのお菓子と、見た目はかわいらしいけれど、その裏には歴史と人々の想いが、太い栗の木の年輪のように折り重なっている。公園の鹿たちも、「神様の使いだから」という理由だけで保護されてきたわけではない。それを守ってきた人々の想いと長い歴史があるからこそ、大切にされてきたのだろう。
奈良生活も残り少なくなってきたし、たまには鹿せんべいを献上しに行こうかな。
(記事・撮影/岡田菜友子)
鶴屋徳満三条通店
住所:奈良県奈良市角振新屋町4番地
電話:0742-27-0353
営業時間:10:00~19:00
定休日: 無
駐車場:無
https://tsuruyatokuman.co.jp/index.html
FURNITURE STUDIO COM
住所:奈良県奈良市川上町968
電話:0742-93-3323
営業時間:
定休日:不定休
駐車場:有
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最終更新日:2022/06/08