奈良、旅もくらしも

【連載】子どもと遊ぶ奈良 『vol.1 ベビーカーで東大寺「達陀帽いただかせ」に行ってみた』春田千尋

  • 紹介している施設の情報は掲載日時点のものです。
  • お子様とお出かけされる場合は、お子様の体調や体力など十分考慮され、親子ともに無理のないようにご注意ください。

子ども連れでも社寺巡りしたい!

こんにちは!
奈良市内で現在0歳の娘を子育て中の春田と申します。
私はもともと大阪出身ですが、子どもの頃から奈良が大好きで、進学先や就職先に奈良を選んだり、遂には結婚した夫を奈良に連れて住むまでに至りました。

そしてめでたく授かった我が子。
親と同じく奈良好きに成長してくれるかは分かりませんが、彼女が育っていくであろう奈良ならではの行事やスポット、文化などに親しむ機会をたくさんつくってあげたいと思っています。

一方で、小さい子ども(特に0歳児)と出かけるには様々なハードルがあります。
・目的地はベビーカーで行動できるの?
・おむつ替えや授乳をする場所はあるの?
・疲れたら休憩する場所は?
・子連れで入りやすい飲食店は?
など、お出かけ前に調べないといけないことがたくさん。

特に奈良は主要な観光地が社寺や史跡だったり古(いにしえ)の景観が保全されるためもあってなんとなく段差が多かったり、子ども向けの設備も少ないイメージがあります。

また、せっかく出かけるなら単に連れ回すのではなくて、子ども本人にも楽しんでほしいですよね!
私の子どもはまだ小さいので、本人が積極的に楽しむのは少し早いかもしれませんが、楽しい刺激を与えたり、空腹や休息などを求める時には適切に対応してあげたいところです。

私の趣味は社寺巡り、登山や古道歩き。
独身時代は奈良の社寺の数々の石段を駆け上がり、時には山道を踏み越えてアクティブに活動していた私ですが、ベビーカーが必要な子どもと一緒に奈良を楽しむことはできるのでしょうか。

そこで今回「大人も子どもも楽しめる奈良の歩き方」というコンセプトで連載をスタートする運びとなりました。
奈良の観光地や行事などを、実際に子連れで歩いてレポートしたいと思います。
同じように親子で奈良を楽しみたい方に、少しでも参考にしていただければ幸いです。

達陀帽いただかせとは?

さて、第一回目は東大寺修二会の行事のひとつ「達陀帽(だったんぼう)いただかせ」の参加レポートです。
奈良を代表する行事のひとつである東大寺修二会。
「お水取り」「お松明」という通称が知られていますが、どちらも修二会という法要の中のそれぞれの行事が由来です。
東大寺修二会の本行は練行衆と呼ばれる僧侶たちが二週間篭り、二月堂の本尊である十一面観音に懺悔することで、天下泰安、五穀豊穣などを祈るというもの。
達陀帽いただかせは、その修二会が満行する3月15日に催されます。
練行衆たちが「達陀(だったん)」の行法の中で使った帽子「達陀帽」を、子どもたちにかぶせる(いただかせる)ことで、その健やかな成長を祈るというものです。

私も独身時代は毎年お松明を見学したり、お水取りを見守ったり、夜間の声明を聴聞したり、北の茶所でうどんをいただいたり(食事の提供はコロナ禍に入ってからは中止されているそうです)と修二会に親しんできました。。
出産してからはずっと「ぜひ我が子に達陀帽をいただかせたい!」と思っていました。

二月堂までベビーカーで行ってみた

さて、二月堂までの子連れアクセスについてです。
当日は近鉄奈良駅から、ベビーカーを押して徒歩で向かいました。
二月堂は東大寺の中でもちょっと小高い場所にあって、結構階段を使って行ってたイメージなのですが、今回はじめてベビーカーで挑戦してみました。
はたして、ベビーカーで二月堂まで行けるのでしょうか?

結論を言うと、ベビーカーで二月堂まで行くことは可能です。
しかも2ルートあります!
事前に東大寺の方に問い合わせたところ、大変親切に教えていただきました。
行き帰りで両方体験したのでご参照ください。

①白蛇川沿いルート(今回は往路)
南大門を越えた辺りに「二月堂参詣道」という案内がありますが、そこから分岐するルートです。

二月堂にほぼ最短距離で行けますし、奈良公園の管理エリアを通るため、道はほぼ全部舗装されており、傾斜も少なく、難なくベビーカーを押すことができました。途中にトイレもあります。

しかし、ルートの終盤、手向山八幡宮の手前辺りにこんな場所が。

階段の横のスロープ。
少し勾配がきついと思いましたが、短いスロープなのでひょいと押し上げることが出来ました。
ただし、登りはともかく下りはちょっと危ないかもしれません。
大人二人以上で行く時なら前後で支えて下ろすことができるかと思いますが、大人一人の時には注意が必要です。
ここを越えて左折すると、すぐ法華堂、そして二月堂が見えます。

修二会期間のため、段差のある部分に様々な工夫が施されていました。

②俊乗堂経由ルート(今回は復路)
続いて、今回復路に選んだ俊乗堂などを経由するルートです。

二月堂エリアから進む場合は、四月堂近くの絵馬堂茶屋さんの隣の道に入ります。

このルートも全て舗装されており、ベビーカーをとても押しやすかったです。
いくつかの階段を迂回するため、ちょっと回り道をする印象がありますが、途中に俊乗堂や鐘楼などに立ち寄ることができ、楽しい散策ルートでした(ただし、車道でもあるため、充分に気をつけてくださいね)。
最終的には大仏殿の東側に合流します。

どちらも、ほとんどの区間を難なくベビーカーで通ることができました。
かかった時間は、大仏殿前の参道まで、①が10分ほど、②が15分ほどでした。歩くスピードによって変わるかと思いますが、ご参考になれば幸いです。

上記の通り①のルートは勾配のきついスロープがありますので、二月堂からの復路ではベビーカーの場合は②を選ぶほうがいいかもしれません。

なお、二月堂のお堂までは流石にベビーカーでは上がることができません。
今回は、邪魔にならないように階段の下の法華堂北門の脇にベビーカーを停めさせていただきました。なお、近くに東大寺の職員さんがおられたら一声かけていただきたいとのことです。
そしてスリングで子どもをしっかり抱っこし、階段を上がりました。スリング以外でも、立った状態で着脱可能な抱っこ紐などがあると便利かと思います。

なお、門を越えてすぐの階段は少し急で手すりもないのですが、右手奥の方の階段には手すりがありますので、子どもを抱っこしていたり、荷物の多い方はこちらを選ぶのがベターでしょう。

▲門を越えてすぐの階段。
▲右手奥の階段。

いただかせレポート

さて、ようやく二月堂に到着しました。
達陀帽いただかせはおよそ10時から15時の開催とのことですが、少し前から、すでに50人くらいの親子連れなどが待っておられて、地元での認知度の高さを感じました。
私が並んでいた時間は、5歳未満くらいの小さなお子さんが多かったです。
なお、子連れでなくても、大人だけでも参加することができます!

さて、10時になりました。
3列に分かれて行列ができます。順番に用意された椅子に座ると、後ろから世話役の方々が達陀帽を頭の上で、被せるふりをしてくださいます。

そこで両手を合わせ
「身体健全に守らせたまえ 南無観世音菩薩」
と唱えるのが正式なやり方とのこと。
子どもたちが小さな手を合わせて祈る姿は、本当に可愛らしいものです。

1人で座れる子もいれば、大人に抱っこしてもらって被せてもらう子も。
我が子はスリングのまま私が抱っこして、一緒に座って被せてもらいました。
まだなんのことか分からず、ちょっと不機嫌そうな顔をしていましたが、私が代わりに観音様にお祈りしました。健やかに成長しますように。

ちなみに、このお祈りするシーンがシャッターチャンスです。
今回は大人1人で参加したのですが、後ろに並んでいた方にお願いして撮影していただきました。お返しに私もその方を撮影したり。こういうお寺の行事では、お互い助け合う精神があらわれやすいですね。

この行事の運営は「朝参講(あさまいりこう)」という講社の方々が担われているのだとか。
皆さんとても親切で、娘に「健やかに育ってね」「また来年も来てね」など、優しく声かけしてくださったのが嬉しかったです。
子どもが多いこともあってか、終始和やかな空気に満ちていました。
こうして子どものころに参加した人が、自分の子どもや孫を連れてまた参加されるという事も多いのではないでしょうか。

奈良ならではの、子どもを慈しむ貴重な行事でした。
毎年3月15日の開催ということで、休みが合わないと難しいかもしれませんが、またチャンスがあれば参加したいと思います。

まとめ

  • 二月堂まではベビーカーで行ける
  • お堂までの階段はベビーカーでは無理なので抱っこ紐やスリングがあると便利
  • 大人一人でも大丈夫だけど、移動や撮影など、大人二人で行くのがベター

文:春田千尋(Instagram @kodomo_nara) 

最終更新日:2023/03/20

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