奈良、旅もくらしも

【連載】奈良で外遊びしてみました「奈良の低山に登ろう!<その1>」naka

第4回【 明神山(王寺町)&二上山(葛城市)】
難易度 ★☆☆(初級)

文/naka

低山のありがたさをコロナ禍で実感

コロナ禍により、私たちの生活は大きく変わりました。奈良県では独自の「緊急対処措置」が実施され、感染拡大エリアへの不要不急の往来を控えることが求められるなど、ちょっとした外出すらままならない日々が続きました。

私自身(※夫婦ふたり暮らし&自宅自営業者)のことについてお話すると、コロナ禍以前から自宅にこもって仕事をしている時間が長かったので、表面的には大きな変化はありませんでしたが、やはり気が滅入りがちでした。

奈良の自然に触れてみたり、お店で美味しい食事をいただいたりと、当たり前のように楽しんでいた日常がぽっかりと抜け落ちてしまった喪失感は、とてつもなく大きかったようです。どうにもすっきりしない気分が拭いきれません。

しかし、幸いなことに、コロナ禍の最中であっても、屋外での運動などは禁止されていませんでした。


娯楽・スポーツ
●公園利用は、すいた時間、場所を選びましょう
●ジョギングや自転車も少人数で、間隔をあけて
●マスクを着用した状態で、息が上がるほどの運動は避けましょう

個人の方への情報/奈良県公式ホームページ


自宅のパソコンの前に座りっぱなしになることが多い私は、こわばってしまった体をほぐすために、以前から軽めのジョギングなどをしてきました。マスク着用とはいえ、外で体を動かすことができるのは本当にありがたいことでした。

コロナ禍で生活スタイルの変化を余儀なくされたため、ポジティブなものもネガティブなものも含めて、いろんな気づきがありました。もっとも強く実感したのが「運動は精神安定の特効薬」ということでした。運動すら禁じられていたら、本当にどうなっていたことやら……。

私が特に救われたのは、近所の「低山(ていざん)」たちの存在でした。

山々に囲まれた奈良盆地には、標高数百メートル程度のお手軽に登れる低山がいくつもあります。自然の中に身を置くだけでも気分はふっと楽になりますし、少しだけ高い山頂から大和盆地を見晴らすと、気分もすっきりしますよ!

今回は、奈良県中部で地元民から愛されている2つの低山、王寺町「明神山」、葛城市「二上山」についてご紹介します。

眺望バツグンの明神山
(登山難易度:☆☆☆ 超初級)

王寺町の「明神山(みょうじんやま)」は、標高274m・山頂まで約1.8kmの低山です。

1時間もかからず登れるお気軽さですが、山頂からはほぼ360度のパノラマが広がって、眺めは抜群!大和三山や三輪山はもちろん、あべのハルカスや明石海峡大橋まで見えるのです。のんびりハイキングに最適ですね。

明神山ハイキングコースのスタートは、山の東側にある明神山鳥居から。近くに無料駐車場もあります。

山頂までのハイキングコースはすべて舗装してあり、傾斜もゆるやかで歩きやすくなっています。山頂までの所要時間は約40分(約1.8km)。小さなお子さんでも自力で登れるレベルですし、ウチの(運動不足な)奥さんでも普通に山頂にたどり着きますので、おそらく大抵の方は大丈夫でしょう。

明神山の山頂には、それぞれ「大和平野」「生駒・京都」「大阪平野・神戸」方面に向いた3つの展望デッキが設置されていて、奈良盆地はもちろん、あべのハルカスや明石海峡大橋まで見渡すことができます(※山頂にはトイレもあります)。

奈良方面の展望デッキからの眺め。大和三山から紀伊山地の山々までが見晴らせます。ここに来るとあらためて「奈良は山に囲まれた土地なんだ」と実感できます。

展望デッキは、正面にどの山が見えているのかを説明したわかりやすいパネルが設置してあります。また、王寺町のサイト「明神山山頂360°スポット | 雪丸散歩」にも詳しく解説してありますので、ぜひどれがどの山なのか探してみてください。

大阪・神戸方面の展望デッキには、「誓いのテラス SORANI(ソラニ)」などもあり、恋人たちが永遠の愛を誓い合うための「悠久の鐘」が設置してあります。

展望デッキから神戸方面を撮影した一枚。やや霞んでいますが、大阪市内のビル群とともに、はるか遠い明石海峡大橋が写っています!別のアングルにはあべのハルカスも見えますので、ぜひ探してみてください。

歴史ロマンの二上山
(登山難易度:★☆☆ 初級)

奈良県葛城市と大阪府太子町にまたがる「二上山(にじょうざん。ふたかみやま)」。金剛山地の北側に位置し、雄岳(517m)と雌岳(474m)が寄り添うように並びます。

古くから神聖な山として崇められており、その名は万葉集に収められた歌にも登場しています。雄岳山頂には悲劇の皇子「大津皇子」のお墓があったり、麓には中将姫ゆかりのお寺「當麻寺(たいまでら)」があったりと、歴史的な見どころが多いのも魅力でしょう。

雄岳と雌岳、2つの山が寄り添う「二上山」。標高も500mほどのものですし、お手頃なハイキングコースとしてお勧めです。
二上山への登り口はいくつかありますが、車の場合は「道の駅ふたかみパーク當麻」に停めて、北にある二上神社近くの登山口から登り始めるといいでしょう。雄岳から雌岳へと縦走して、祐泉寺方面へ下りるルートをとると一周できます。

二上山の登山道はしっかり整備されていて歩きやすいです。このルートは、奈良から大阪へ至る約45kmの自然歩道「ダイヤモンドトレイル」の一部となっています。健脚の方は時間をかけて全コース完歩を目指してみてもいいかもしれません。

雄岳の山頂までは、私の脚で約40分ほどです。残念ながら木々に覆われていて、見晴らしはよくありません。 山頂の少し下には、飛鳥時代に悲劇的な運命をたどった「大津皇子(おおつのみこ)」のお墓があります。姉・大来皇女がその死を悲しんで詠んだ歌「うつそみの人なる我や 明日よりは 二上山を弟(いろせ)と我(あ)が見む」が万葉集に収められており、よく知られています。

雄岳から雌岳へは、約15分ほどで到着します。山頂には大きな日時計があり、大和三山を見晴らす眺望が広がっています。

大和三山などが見えます。登山好きな方はもちろんですが、歴史好きな方にもぜひ登ってほしいですね。先に紹介した明神山よりは難易度は上がりますが、地元の小学生も遠足で登るような山ですから、頑張ってみる価値はあると思います!

ちなみに、この日は小さな三脚を持参して自撮りをしてみたりもしました。混雑した山では他の人のご迷惑になってしまいますが、空いている日にはこんな楽しみ方もできます。

低山でも遭難の危険性あり。準備は怠りなく

ここでご紹介した以外にも、奈良市内の「若草山」も登って気持ちの良い低山です。また、万葉集にも詠まれた飛鳥の「大和三山」(香久山・畝傍山・耳成山)などもお勧めです。3つの山を一日で制覇することも難しくありませんので、ぜひチャンレンジしてみてください(※後日ここでレポートしたいと思います)。

遠くの山へ登りに行くのも楽しいものですが、今はあらためてご近所の低山に目を向けるいい機会かもしれません。

「身近にこんな山があったんだ」と知っておけば、下界で何かあったときでもいつでも逃げ込めます。気軽にそんな気晴らしができるのも、奈良で暮らす大きなアドバンテージなんですから。

ただし、標高が数百メートルで難易度の低い低山とはいえ、怪我や遭難の可能性はゼロではありません。私もかつて二上山で道を間違えてしまい、日が暮れてきて怖い思いをしたことがありました。歩きやすい靴・いくらかの水と食料・寒さを凌げる上着など、最低限の装備は必須です。また、早めの時間に登りはじめて早めに下山することを心がけましょう。

【関連URL】
明神山山頂360°スポット | 雪丸散歩 | 王寺町公式サイト
明神山 – 王寺観光協会
二上山/葛城市
大津皇子が眠る二上山と葛城の里│歩く・なら

【関連URL】
屏風岩公苑 | 曽爾村観光協会

執筆者紹介

連載「奈良で外遊びしてみました」
文/naka

最終更新日:2021/11/20

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