奈良、旅もくらしも

【連載】奈良で外遊びしてみました「登山+桜のアクティブお花見!」@曽爾村naka

第3回 「屏風岩公苑の山桜」@曽爾村
難易度 ★★☆(中級)

文/naka

コロナ禍だからこそ、より桜が恋しく

新型コロナウィルスの脅威が続いた2021年の春。全国的に桜の開花は早く、例年よりも1~2週間も早く見頃を迎え、まるで先を急ぐかのように散っていきました。

貴族たちから愛された吉野山を筆頭に、奈良県内にはいくつもの桜の名所があります。しかし、今年は「満開の桜の下にみなで集まってお酒を酌み交わして……」なんてお花見はできませんでした。静かに桜を愛でながら、「来年の春こそ諸々が晴れやかであるように」と願う年だったのかもしれません。

そんな中、外で体を動かすことが大好きな私は、桜を眺めながらの “お花見ラン” を幾度もやりました。

私は自宅で作業する自営業者で、外出を減らす生活スタイルが自然と身についていたこともあって、コロナ禍ではますます家に籠りがちです。そんな日常生活の中で、大和高田市の「高田千本桜」の下をのんびりと走る時間が、どれだけ救いになってくれたことか。

もちろん、ジョギング中にも厚手のスポーツ用マスクを身に着けたりと、不自由さがあったことも事実です。しかし、こんな体験をしたからこそ、すでに来年の桜を待ち遠しく思っています。 そんな2021年の桜シーズンでしたが、締めくくりとして、以前からやってみたかった「登山+桜」の “アクティブお花見” を楽しんできました。

そそり立つ屏風岩と300本の山桜

奈良県の東部に位置し、三重県と県境を接する「曽爾村(そにむら)」。秋に一面が黄金色に輝く「曽爾高原のすすき」などで知られ、激しい火山活動と川の侵食により誕生した「兜岳(かぶとだけ)」「鎧岳(よろいだけ)」「屏風岩(びょうぶいわ)」などの奇岩群も見られる、自然豊かな土地です。

国の天然記念物に指定されている「屏風岩」は、高さ約200mの垂直の断崖が、約1.5kmにもわたって連なります。春には、岸壁にはミツバツツジ、麓に広がる公苑には300本を超える山桜が咲き誇り、秋には紅葉で彩られます。

屏風岩の桜の楽しみ方は、下から見上げて「桜+断崖絶壁」の構図とするのが定番ですが、実は屏風岩に登って、上から一面に咲く桜を見下ろすこともできるのです!

「一度その光景を見てみたい」と思い続けていたのですが、ようやく念願を叶えてきました。


鋭くそそり立つ「鎧岳」(標高894m)。西側の「兜岳」(標高920m)とともに、曽爾村のシンボルとなっており、雄々しい山容は独特の景観を形作っています。

曽爾村の奇岩群の一つ「屏風岩」は、桜の名所として知られており、麓に広がる公苑には300本以上の山桜が咲き誇ります。例年は、奈良県内でも遅めの「4月中旬~下旬ごろ」に見頃を迎えますが、全国的に桜の開花が早かった2021年は、4月8日時点ですでに満開でした!

断崖絶壁の麓は、屏風岩公苑として整備されています。この日は生憎の曇り空でしたが、桜を目当てにカメラマンやハイカーさんたちの姿が見られました。なお、屏風岩公苑までの道中は、車のすれ違いが難しいような道幅の狭い部分もあります。運転はお気をつけください。

200mもの垂直の壁が、約1.5kmにわたって続く絶景に、桜がやわらかな彩りを添えています。桜の見頃には、夜のライトアップも行われます。

スマートフォンで撮影した一枚。屏風岩と山桜のコントラストが見事です!

また、屏風岩公苑からは、連なる山々も遠望できます。向かって左側の山肌の色が薄い部分が、すすきの名所「曽爾高原」です。ここだけ高い木などが茂っておらず、奈良市内から若草山を見上げているような気分になります。

屏風岩の上からお花見(?)できます

ここからは登山レポートです。この満開の山桜を、屏風岩の上から見下ろしてきたいと思います!

登山ルートの入口は、屏風岩に向かって左側にあります。

登りが始まってすぐ、急な勾配が続きます。短くつづら折りになっていますが、高さ200mの断崖をほぼ直登するようなものですから、結構な負荷です。

屏風岩の真上部分です。このすぐ下は200mの断崖ですが、当然のことながら柵もロープもありません。私は高所恐怖症なので、万が一、足を滑らせたら……と考えると、身体がこわばりました。

屏風岩の上から眺めた公苑の桜!眼下が桃色に染まって、とても綺麗でした!

木々が茂っていて見晴らせる箇所は多くありませんが、視界が開けると眼下はこの絶景です。天にでも登ったような気分ですが、撮影しようと手を伸ばすだけでも怖いです。物や石などを落下させないよう、そして自分が落下してしまわないよう、くれぐれもお気をつけください。

屏風岩公苑の桜と、延々と連なる山々。
なお、桜を見下ろせる「一ノ峰」までは、私の脚(50代・男性。フルマラソンを走るくらいには健脚)で約15分でした。決して楽な斜面ではありませんが、30分ほどかけてゆっくりと登ればこんな景色が見られますのですから、頑張る価値はあるでしょう。
※しっかりとした靴を履いて登りましょう。
※雨の日やその翌日は危険かも。無理は禁物です。

住塚山・国見山にも登ってきました

この日は、屏風岩の奥にある「住塚山」(麓から1.1km)と「国見山」(麓から2.3km)まで登って、同じ道を戻ってくるルートをとりました。道中はきつ目な部分もありますが、住塚山の山頂までは比較的登りやすい道が続きます。

一ノ峰から約20分ほどで住塚山の山頂へ。それほど見晴らしはありませんので、休憩もほどほどに、さらにその奥の国見山へと向かいました。

住塚山からさらに約20分ほどで国見山の山頂へ。ロープを頼りに登る短い岩場などもありましたが、登山難易度は高くありません。道に迷うような分岐もほとんどなく、安心して登れました。ここから「クマタワ峠→済浄坊の滝」方面へと進んで周回ルートにすることもできますので、そちらもいつかチャレンジしてみたいと思います。

国見山の山頂からの眺め。山の名前に相応しい、晴れ晴れするような眺望でした。

画像が粗くて申し訳ありませんが、山中では野生の鹿の姿も見かけました。
なお、私は山道などの不整地を走るトレイルランナーの端くれなので、緩やかな上り下りは軽く走ります。この日はそのまま来たルートを駆け下って、トータルのコースタイムは約1時間40分でした(平均より早めです)。
美しい山桜を愛でるだけではなく、登山的な楽しみも加えることができますので、来年の春はぜひこんな “アクティブお花見” にチャレンジしてみてください!

■屏風岩公苑

●住所:奈良県宇陀郡曽爾村長野
●桜の見頃:例年は4月中旬~下旬ごろ
●駐車場:50台(※春と秋のシーズンのみ有料:乗用車500円)
※桜の開花時期にはライトアップも行われます。

【関連URL】
屏風岩公苑 | 曽爾村観光協会

執筆者紹介

連載「奈良で外遊びしてみました」
文/naka

編集部から/「桜!?」と驚かれたことと思います。このタイミングはひとえに担当の砂川の責任です。 ご容赦ください! とってつけたようになりますが、 桜の名所は紅葉の名所です。 こちらの現地のことを詳細にご紹介くださっている記事、紅葉を楽しみたいという方にも、おおいにご活用いただけると思います。曽爾村では、曽爾高原の今年のススキが良い!というお話が聞こえています。ぜひ秋の一日のお出かけにお役立てください。(砂川みほ子)

最終更新日:2021/10/22

TOPへ